《介護・医療危機》ホームヘルパー、ケアマネジャー座談会~大激変招いた06年報酬改定 利用制限、人材確保に苦慮

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--昨今、訪問介護事業所の経営不振が目立ちます。皆さんの事業所はいかがですか。

 私は大手企業の事業所の管理者を務めていましたが、06年に制度が変わって、予防プランは受け持たない、重度者の介護しかやらないという方針になったので辞めました。そして事業所を立ち上げました。最初は大変でしたが今のところは順調です。介護報酬の中から家賃や経費、ヘルパーの給料も賄えて少しは貯金もできた。1年経った今はボーナスも出せるようになりました。

 当社は06年度に職員の給与を下げました。その前年に役員報酬を下げましたが、先が見通せないので職員の給与体系を見直したうえで、売り上げが伸びたらボーナスで還元するという仕組みにしました。06年度以降は給与は据え置きです。もちろん、能力アップと見なすことができれば昇給はあります。

--09年度の介護報酬改定では、報酬を3%引き上げるとともに、介護職員の賃金改善に結び付けていくと厚生労働省は説明しています。

 暫定的に1人当たり2万円くらいアップすると聞きますが、どういう形でお金が来るかわからない。

 報酬引き上げでは、都内など人件費が高い地域に配慮してほしい。その一方で、利用者に負担が及ばないような形にしてもらいたい。

--介護保険サービスの使い勝手をよくすることも必要ですね。

 要介護4や5の重度になると、限度額は足りない人も少なくない。限度額をはみ出た分、やむをえず自費で対応する人もいます。一方でサービスが必要な人が軽い区分に認定されることが多い。視力、聴力障害があり、自分の飲む薬も見分けがつかない障害者の方が、最も軽い要支援1になっています。要支援1の場合、訪問看護を入れると、ヘルパーは週に1回しか来てもらうことができない。ヘルパーを週2日にすると、訪問看護が入らない。以前は要支援2で必要なサービスはぎりぎり賄えたが、状態が変わらないのに軽い区分になった。理不尽な話です。

--今年5月、財務省は軽度者を介護保険給付の対象から外したり、自己負担を2割にした場合の介護給付額に与える影響の試算を公表しました。軽度者を給付対象から外した場合、どんなことが起こりますか。

 軽度者の軽視は大変危険なことです。在宅のケアは実の親子でも生易しいものではありません。

 地域から孤立し、生活そのものが成り立たない高齢者がたくさん出てくるでしょう。栄養不良になったり、買い物も近くのコンビニばかり。ゴミ屋敷になったり、気がつかずに家の中で亡くなっているということもありえますね。そんな世の中にしてはいけないと思います。


(週刊東洋経済)

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