谷垣氏に国政復帰を望む声、思惑はさまざま 自身は否定も、首相周辺は「参院比例に」と

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谷垣氏は当選以来、保守本流の自民党宏池会(現岸田派)に所属し、宮澤喜一元首相、加藤紘一元幹事長(いずれも故人)に師事し、党内ハト派グループのリーダー格とされてきた。

2000年11月の「加藤の乱」で宏池会が分裂した際は、加藤氏に従っていわゆる「第2宏池会(加藤派)」に所属し、加藤氏が秘書の金銭スキャンダルで議員辞職し、政界復帰後に派閥を離脱したこともあって谷垣派(当時)の領袖となった。その後、宏池会再結集で古賀派(同)と合併したが、総裁選をめぐる対立で再び離脱して谷垣グループ(有隣会)を立ち上げ、事故による政界引退後も同グループの精神的支柱となってきた。

第2次安倍政権発足時に谷垣氏は、本命視された衆院議長を断り、首相の要請で法相に就任した。さらに、2014年9月の党役員・内閣改造人事では、総裁経験者としては初めて党幹事長に就任した。

タカ派の首相とは政治理念に差があったが、幹事長として「誠実に安倍政権を支えた」(自民幹部)。このため首相は、ゴルフにたとえて「谷垣さんが政権の中軸にいることでティーショットがフェアウエイの真ん中に飛んだ」と評価を惜しまなかった。

谷垣氏に閉塞感の打破を期待する声

谷垣氏との親密な関係を維持してきた首相は、今年に入って繰り返し谷垣氏との接触を求めたとされるが、「谷垣氏に政界復帰を働きかけることで、総裁選での谷垣グループの取り込みを図るのが目的だった」(細田派幹部)とみられている。ただ、谷垣氏が「リハビリ中」を理由に応じなかったため、9月の総裁選では谷垣グループは首相支持と石破氏支持に分かれ、分裂状態に陥った。このため、同グループは「リーダーの活動再開で求心力を高めたい」(幹部)と谷垣氏の復活に期待しており、今年7月に国会近くのビルにバリアフリーの事務所を新設した。

谷垣氏の復帰について、ポスト安倍の1番手とされる石破茂元幹事長も「野党時代を知らない党内若手に、自民党のあるべき姿を伝えてほしい」と政治活動再開に期待を示す。さらに野党陣営からも「安倍政権の1強体制にブレーキをかけ、多様な意見を議論し合える国会の再生に力添えしてほしい」(玉木雄一郎国民民主党代表)など、与野党の枠を超えて谷垣氏の本格復帰を歓迎する声が広がっている。

こうした状況にも着目したのが首相サイドで、首相は10月31日の面会で、谷垣氏の政界復帰のため、来夏の参院選での比例代表出馬を打診したとされる。しかし、谷垣氏は面会後に「『老兵は死なず、消えゆくのみ』というのが一番適切ではないか」と国政復帰を否定した。

ただ、首相周辺は「谷垣氏が比例で出馬すれば目玉候補になり、無党派層の票も取り込める」と指摘し、谷垣氏周辺も「苦戦が予想される自民党の下支えになるのなら、出馬も選択肢」と期待する。さらに、石破氏のライバルの岸田文雄政調会長の周辺も「谷垣グループが求心力を回復すれば、同じ宏池会仲間として次期総裁選での協力も期待できる」と語る。

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