あの「モランボン楽団」超える美女楽団の正体 北朝鮮のソフト路線転換で主役に躍り出る

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これらの楽団の演奏活動に変化が見え始めたのは今年に入ってからだ。

2018年1月に北朝鮮は急きょ、韓国の江原道で開催される平昌(ピョンチャン)冬季五輪への参加を表明。さらに芸術団を派遣し、ソウルと江陵(カンヌン)の2カ所で、芸術公演の開催を決定した。

そこで登場したのが、実は三池淵(サムジヨン)管弦楽団だ。このとき同行した、金正恩(キム・ジョンウン)委員長の実妹である金与正(キム・ヨジョン)氏の微笑みと、同芸術団の団長である玄松月(ヒョン・ソンウォル)氏、そして赤いコートと黒い毛皮の帽子をまとった美しい団員たちは、韓国国内でも大きな話題となった。「三池淵(サムジヨン)」とは、北朝鮮北部・両江(リャンガン)道に位置する、白頭山のふもとの”革命戦績地”たる湖の名前である。

かつては北朝鮮を代表する万寿台(マンスデ)芸術団内に、三池淵楽団というユニットが存在したが、今回結成されたのは別の楽団だ。メンバーは青峰楽団の歌手を中心に、万寿台芸術団や功勲国家合唱団の演奏家が参加。指揮者は功勲国家合唱団に所属し、北朝鮮では人民芸術家と称される、チャン・リョンシクやユン・ボムジュが抜擢された。いわば北朝鮮の実力派アーティストが集結したドリームチームでもあった。

専用のコンサートホールまでオープン

一方、金正恩政権発足後、音楽活動の中心となってきた牡丹峰楽団は、2018年の新春公演や同年2月の公演以降、単独では表舞台に立っていない。朝鮮民主主義人民共和国の創建70周年を迎えた今年9月9日には、同楽団のコンサートがあるのではと期待されたが、開催されなかった。

三池淵管弦楽団は今年4月、中国芸術団の訪朝を歓迎する宴会にも登場、同じく4月27日に板門店で開催された南北首脳会談の歓迎晩さん会での合同公演に、一部メンバーが参加した。さらに北朝鮮は平壌市内の旧サーカス劇場を改築して、三池淵管弦楽団専用のコンサートホールをオープンさせ、金委員長も公演を鑑賞して団員たちと懇談した。この劇場は生の音響に徹底的にこだわって設計されており、金委員長が自ら建設を指導したと言われている。今後、北朝鮮芸術団のアメリカ公演が実現するのであれば、この三池淵管弦楽団が派遣される可能性が高い。

三池淵管弦楽団の活躍はとどまることを知らず、北朝鮮の外交の表舞台に立ち続けている。今月に入って立て続けに公演を行った。11月2日には訪朝した中国芸術家代表団を歓迎する公演を開催し、朝鮮の曲ばかりではなく『長江の歌』など中国の名曲も多く披露。中朝親善の歴史を振り返るフィナーレ『朝中親善よ、永遠なれ』で幕を閉じた。翌3日には、中国と北朝鮮の双方の芸術家たちによる合同公演が開催され、三池淵管弦楽団の一部メンバーが登場している。今年3月下旬、金委員長による電撃的な中国訪問に始まる「非核化」に寄せた、両国の蜜月を強調したのである。

三池淵管弦楽団のメンバーにとっては休む間もなく、キューバの国家評議会議長兼閣僚評議会議長ミゲル・マリオ・ディアス=カネル・ベルムーデス氏の訪朝を歓迎する公演が翌4日、開催された。この舞台には三池淵管弦楽団のみならず、功勲国家合唱団、牡丹峰電子楽団(牡丹峰楽団の弦楽器カルテットをそう呼ぶかどうか詳細は不明)、旺載山芸術団と国内の芸術家たちが総力をあげて出演。北朝鮮曲『社会主義ただひとつの道へ』、キューバ楽曲『社会主義キューバ』などを披露した。スクリーンには、金日成(キム・イルソン)主席や金正日(キム・ジョンイル)総書記とキューバのカストロ議長の世代を越えた邂逅のシーンを映し出すなど、同じ社会主義国家としての親善と団結について、国内外へ見せつける姿勢を存分に窺わせた。

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