韓国・現代自動車に見えた勝ち残りへの課題

業績不振に株価急落、ささやかれる危機論

電気自動車は内燃機関とは違い、駆動系統の差別化が難しい。また、消費者への訴求力が高いデザインが自動車の販売量を占う決定的な要因となるというのが、自動車業界の予想だ。現代自動車もこのような産業の変化に照準を合わせ、意志決定の過程においてデザイン部門により力を与えるという方針だ。

これとともに、高性能自動車の開発も強化する。これは現代自動車のブランド力とイメージをさらに高めるためのようだ。鄭氏は今年1月、コンシューマー・エレクトロニクス・ショー(CES)で「馬車を引くには馬が必要なように、よく走る競走馬もいるべきだ。現代自動車には高性能自動車もあるべき車種」と述べたことがある。

今回の人事を発表する前にも、現代自動車は国内外で発生する問題をひとつずつ解決するという意志を見せてきた。国内のアンチ現代自動車という雰囲気を鎮めるための「Hオンブズマン」などが、その代表例だ。これは、現代自動車の商品とサービス、マーケティング、CSV(共通価値)の創出などでも、顧客の意見を聞き、改善する方法を用意する制度だ。

支配構造の改編が課題

海外市場でも、大々的な再編を実行している。現代自動車は今回の人事で、昨年9月に赴任した米州販売会社のイ・ギョンス社長を本社諮問として呼び戻した。任期3年の海外法人社長を1年半で交替させたのは同社でも異例だ。アメリカでは新型「サンタフェ」の販売不振など、販売台数の減少を一所懸命食い止めようとしている状況だ。

鄭氏は9月18日、ワシントンDCでロース商務長官と会い、輸入自動車に高率関税をかけるというアメリカ政府の方針に対し、自社の立場を説明したことがある。同社はアメリカと中国に集中している市場を、ロシアやインド、中東など新興国へ広げようとしている。インドでは、SUV車を中心に販売を増やす目標だ。

ただ、現代自動車のこのような努力が、短期間で成果を出せるかは厳しそうだ。来年も自動車業界の不振は続き、新興国の通貨安も予想されるなど、輸出に明るい見通しが立っていない。実際に、韓国内の主要証券会社が同社の目標株価を14万~15万ウォン(約1万4000~1万5000円)水準へ相次いで下方修正を行っている。

韓国イーベスト投資証券のユ・ジウン研究員は「現代自動車がアメリカとその他新興国で販売が改善していると発表したが、固定費の増加とアメリカでのリコールなど問題がある。第4四半期の業績にも保守的に見ざるをえない」と言う。また、同社としては経営権の継承も急ぐ必要がある状況だ。株主で「アクティビストファンド」といわれるヘッジファンドのエリオット・マネジメントが同社の経営改革案に意義を唱えるなど支配構造の改編スピードにブレーキがかかる中、鄭氏は個別事業部の成長性とビジョンを提示して経営者たる名分を確保しなければならない課題が存在する。

(韓国『中央日報エコノミスト』2018年11月12日号を一部加筆・修正)

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