教養として読むべき「経済学の名著」ベスト5 数式がほぼ出てこないすごい本も!

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伝統的な経済学は常に「合理的プレーヤー」を想定しますが、実際の人間は、非合理的な選択ばかりします。たとえば、今の住宅ローンから別の住宅ローンに借り換えれば金利面で得になることがわかっているのに、銀行員の熱心な売り込みや手続きの煩雑さ、プランの選択肢の多さなどに尻込みし、結局借り換えしないまま、何年も放置したりします。

ならばそういう人には、より「簡単」なプランだけを提示し、しかも「しつこくくどく(ナッグ)」ではなく、「軽く肘で小突く(ナッジ)」ように、ポンと背中を押してやればいいのです。つまり「このプランなら、今より確実に金利面でお得です。しかも月末までに借り換えれば、さらに0・5%お得」みたいな具合に。セイラーは経済学に心理学を統合させることで、僕らのお金に関する決断に、大きな判断基準を与えてくれています。

③『マクロ経済学』入門編 マンキュー

――初学者を決して突き放さない丁寧な教科書

マンキューはニューケインジアンのリーダー的存在で、29歳の若さでハーバード大学の教授に就任し、2003年にはブッシュ大統領の大統領経済諮問委員会の委員長を務めた英才です。そのマンキューといえばやはり「経済学の教科書」です。

根気強く説明してくれる一冊

彼が経済学部の学部生向けに書いた教科書『マクロ経済学』はベストセラーとなり、世界各国で翻訳・使用されています。彼はこの教科書の執筆料と印税で家を建てたといわれています。

本書はその教科書となった本から、さらに基礎的な部分だけを選んでまとめたものです。

読むと、とても丁寧な作りになっています。教科書には、最初から数式や難しい言葉を並べ立てた「かましてくる」系のものも多いですが、マンキューは決して初学者を突き放しません。「この章では何を学ぶか」「この単語の意味は何か」「なるべく数式を使わない」「具体例を多く」を徹底し、読者に伝わるよう根気強く説明してくれます。

「じっくり学べば絶対わかるよ」オーラが強い、オススメの1冊です。

④『クルーグマン教授の経済入門』クルーグマン

――「経済で注目すべき点」がハッキリわかる!

クルーグマンは、「新貿易理論と経済地理学」が評価され、2008年にノーベル経済学賞を受賞しました。彼は、「経済学のわかりやすい解説者」としても有名で、『クルーグマン教授の経済入門』はとても面白い本です。

彼自身によるとこの本は、「学問的な水準を保ちつつ、しかも専門家以外の一般読者にもわかるような、アメリカ経済についての短い本」です。原題は『期待しない時代』。この本が書かれた1990年代のアメリカは、経済的にはろくな実績を上げていないにもかかわらず、それをどうにかしろという政治的圧力もない停滞の時代でした。

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