スムーズに曲がれる、進化する鉄道の台車 東京メトロやJR各社が「自己操舵」を続々採用
東京メトロ02系で自己操舵台車を試験した際のデータでは第1軸の横圧は約32%低減したほか、第2軸リンク荷重および第3軸のアタック角の大幅な減少が確認された。また、銀座線1000系でカーブ区間左右方向の振動加速度測定を行ったところ左右振動加速度が大幅に低減しており、レールへの負荷低減も確認できた。
また、半径172m、カント111mm、スラック量13mmのカーブ区間の床下騒音レベル評価では1kHz以下の低周波数領域および4〜7kHzの高周波数領域の騒音の大幅な低減が確認された。
JR北海道の採用例
JR北海道では石勝線・根室本線向けに導入された振子式気動車キハ283系に自己操舵台車を採用している。
操舵機構は東京メトロと同じくボギー角に連動したリンク式だが、キハ283系は2軸とも操舵させる方式であることと、振子台車がベースとなるため、その構造は東京メトロの自己操舵機構とは異なる。
操舵機構は操舵はり、操舵てこ、操舵リンクで構成。操舵はり左右には操舵てこが連結され、操舵てこの前後に連結された操舵リンクがそれぞれ軸箱と連結された構造となっている。
操舵はりは、台車枠の心皿上に搭載された横はりの上に載っており、さらにその上には振子はり(ボルスタの役割も持つ)が搭載されている。これらはカーブ区間で車体と同じ動きを取るため、首を振る台車枠に対してボギー角が発生。この結果操舵機構が動作してカーブ内側の軸距を縮め、外側の軸距を拡げることで前後輪軸を均等にラジアル方向に開いて横圧を低減させる。
操舵量は半径500mのカーブで約2mm、半径100mでも約10mmと非常に小さい。しかしこれだけでも横圧の低減効果は高いという。
ボギー角に連動したパッシブ機構なので、信頼性が高いという点は東京メトロと同様。しかし前後輪軸を均等に動作させるため、操舵装置の構造は大きく重くなるのが弱点だといえる。
JR東海の採用例
JR東海では「しなの」用の383系に自己操舵台車を採用した。
この台車は東京メトロやJR北海道のように輪軸を操舵せずに、軸ばねの特性を利用して横圧の低減を図ったのが特徴で、東京大学の須田義大教授が提案した前後非対称操舵台車と呼ばれる方式となっている。
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