スムーズに曲がれる、進化する鉄道の台車 東京メトロやJR各社が「自己操舵」を続々採用

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383系の台車の外観は一般の台車と変わらない。写真の台車は右側の軸ばねが柔支持となっている(筆者撮影)

これは車端部寄りの第1・4軸の軸ばねを柔支持として輪軸の拘束力を弱め、カーブ区間に入った際に外側のレールから受ける力を受け流すように操舵させるものだ。

一方車体中央寄りの第2・3軸は従来通り軸ばねを剛支持として直進走行安定性を重視した。

当初383系先行車では進行方向に対して常に前方の軸ばねを柔支持として、方向転換の際に支持硬さを切り換える柔剛切換式を採用していた。これは従来のボルスタ台車では第1・3軸の横圧が高くなる傾向があったからである。

しかし、試験の結果ボルスタレス台車では第1・4軸の横圧が高くなる傾向にあることが判明。その結果柔剛固定式に変更された。なお、383系の横圧は30%以上の低減が確認された。これは時速25kmのスピードアップ分に相当する軌道保守量の抑制効果があるという。

メリットは通常の台車と構造が全く変わらないことで、コスト面でも非常に有利だと言える。

小田急電鉄の採用例

小田急VSEでは連接台車に自己操舵機構を搭載している(筆者撮影)
写真手前の空気ばね支持柱の後ろに見えるのが自己操舵用のダンパ(筆者撮影)

小田急は50000形VSE車に自己操舵台車を採用した。この台車は輪軸を操舵するものではなく、台車ごと操舵する方式を採用しているのが特徴である。

VSEの自己操舵装置は車体間に装着する連接台車に搭載されている。VSEの連接台車の中心ピンの左右にはダンパを取り付けるポイントがあり、それぞれ前後の車端部と連結している。ダンパを上から見ると中心ピンを挟むように点対称となっている。

VSEがカーブに進入すると、車体の動きに対応してカーブ内側のダンパの反力が台車枠に作用。これによって台車をカーブの内側に転向させるモーメントが発生し、前軸の横圧を低減させる。

この操舵機構も東京メトロ、東武、JR北海道、JR東海同様パッシブ式なので信頼性は高い。

自己操舵台車の今後はどうなる?

このように国内で採用されている自己操舵台車は、いずれもパッシブ方式である。では能動的に操舵を行うアクティブ方式の強制操舵台車の可能性はあるのだろうか。実は国鉄時代にアクティブ操舵台車の研究が行われた。

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国鉄DT953形台車は台車制御用油圧シリンダと輪軸制御用油圧シリンダを搭載しており、カーブの地点を検知するとシリンダを駆動させて台車の転向および輪軸の操舵を行う。なお、カーブの地点検知は制御付自然振子と同じシステムを使用する。

DT953形は381系の制御付自然振子試験用編成に装着して試験を実施した。しかし制御の信頼性が不十分だったため本線走行はしていない。

なおDT953には強制操舵や半強制操舵、自己操舵など8種類の操舵方式を組み込んで比較試験を行っており、このうち、車体や台車のロール角に連動した半強制操舵方式については本線走行試験を実施したものの実用化されていない。

キハ283系で説明したとおり、自己操舵台車の軸距変動量は非常に小さいため、アクティブ制御は非常に繊細なものとしなければならず、実用化は容易ではないと言われている。

カーブ区間を安全に走る技術だけでもこれだけの事例がある。鉄道の安全運行のためのたゆまぬ努力は今後も続く。

松沼 猛 『鉄おも!』編集長

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まつぬま たける / Takeru Matsunuma

大阪府出身。明治大学文学部卒。株式会社三栄書房に20年間在籍し、編集者として世界各地を飛び回った。2008年12月から『鉄道のテクノロジー』編集長を務めた後、2013年5月に独立。現在は『鉄おも!』編集長のほか、『鉄道ジャーナル』『ニューモデルマガジンX』『カーグッズマガジン』、鉄道、自動車関連ムックなどに執筆。

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