「テスラ・キラー」EVベンチャーが失速した真因 財政難、創業者退任、従業員大量リストラ続く

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振り返ればこれまでにも数々の「テスラ・キラー」が登場してきた。最初に話題になったのはフィスカー・オートモーティブ社で、「カルマ」という10万ドル(1120万円)を超えるEVスーパーカーを提げてテスラとほぼ同時期にデビューした。2009年にはEV化を促進するオバマ政権の下、テスラには4億ドル(450億円)、フィスカーには5億ドル(560億円)を超える政府融資も実施された。

しかしその後フィスカーは経営難に陥り、2014年中国自動車部品メーカーの万向集団に売却された。創業者であるエンリケ・フィスカー氏はその後新たにフィスカー社を立ち上げ、「Eモーション」というスポーツカーで捲土重来を図っている。

またテスラの元従業員らが立ち上げたルーシッド社もテスラモデルSに対抗するEVスポーツカー「ルーシッド・エア」の生産に着手しており、2500ドルの予約金で予約販売を受け付けている。現在ではBMWによるi8をはじめ、ポルシェ、アストンマーティン、メルセデス・ベンツ、ボルボなども次々に高級EVの発売を表明しているが、テスラほどの人気には至っていない。

際立つテスラEVの販売台数

テスラが3万5000ドルから購入できる「モデル3」投入を発表すれば、今度は大手自動車メーカー、ゼネラル・モーターズ(GM)が同程度の価格である「ボルト」をモデル3に先行して販売を始めた。ボルトは「テスラ・キラー」として華々しくデビューしたものの、2017年の売り上げ台数は2万3297台と、テスラ「モデルS」の2万7060台にも及ばない数字となった。

今年1月から7月までの販売台数を見るとトップはモデル3の3万8082台、続いてモデルSの1万2020台、モデルXの1万0850台とトップ3をすべてテスラが占め、GMのボルトは9289台、続いて日産「リーフ」7808台で、テスラの牙城を崩すには至っていない。(InsideEV社調べ)

ファラディ・フューチャーも最初の勢いこそ目を見張るものがあったが、その後ラスベガスの工場は大幅に規模が縮小され、今年にはフォーミュラEからもその姿が消えた。そして10月、ジアCEOは今年5月1日以降に雇用された社員に対し、無期限の雇い止めを行った。

さらに5月1日以前から働いている正社員に対しては年収5万ドルを上限とする大幅な給与削減、また非正規社員には会社に残留する場合は州の最低時給での雇用継続になることも発表された。

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