「徴用工の勝訴」は用意周到に準備されていた 判決の背後には文大統領の意思も見え隠れ

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さらに文大統領は金氏を指名した2017年8月の記者会見で、2012年の大法院の判決を引用しつつ「韓国政府もそのように望んでいる」と述べた。

文大統領は2012年の大法院判決を支持していた(写真:REUTERS/Max Rossi)

なお文大統領の“政治的師匠”である故盧武鉉元大統領は2005年、「徴用工問題は日韓請求権協定に含まれ、韓国政府が賠償を含めた責任を持つべきだ」という政府見解をまとめている。盧大統領の側近として2004年から大統領府に勤務していた文大統領が、それを知らないはずはない。

また今回の大法院判決を踏まえて韓国外務省の報道官は「判決が日韓関係に否定的な影響を及ぼさないように、両国が知恵を出し合わなければならない」とのコメントを出した。これは康京和外交部長官が9月27日に河野外相に対して「和解・癒し財団」の解体を示唆し、日韓慰安婦合意破棄をほのめかした時のセリフとほぼ同じで、結果は韓国の思惑通りになっていることに留意すべきだろう。

今年は日韓共同宣言20周年だが…

徴用工問題は今回の新日鉄住金のほか、三菱重工や不二越、日立造船などの日本企業もターゲットにされている。原告の数は現在のところ約1000名だが、韓国政府が把握している元徴用工の数は約21万7000名。仮に全員が1人1000万円という新日鉄住金の条件で損害賠償が認められるとすると、なんと2兆1700億円にも上ってしまう。こうした事態に、経団連、経済同友会、日本商工会議所、日韓経済協会の4団体も「今後の韓国に対する投資やビジネスを進める上で障害になりかねない」とコメントを出した。

今年は21世紀に向けた新たな日韓パートナーシップを謳った日韓共同宣言20周年だ。

同宣言の11には、「小渕恵三総理大臣と金大中大統領は、21世紀に向けた新たな日韓パートナーシップは、両国国民の幅広い参加と不断の努力により、更に高次元のものに発展させることができるとの共通の信念を表明するとともに、両国国民に対し、この共同宣言の精神を分かち合い、新たな日韓パートナーシップの構築・発展に向けた共同の作業に参加するよう呼びかけた」とある。すでに鬼籍に入った小渕首相と金大統領は、現在の日韓関係をどう見るだろうか。

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