人手も機材も不足、「北陸新幹線延伸」の現状 金沢―敦賀2022年度開業へ「工事急ピッチ」

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小松木場潟(北)高架橋の現場。機械を傾け、杭を斜めに打ち込んでいく(記者撮影)

建設現場も曲者だ。周辺は干潟や水田が広がる軟弱地盤。そこで高架橋を支える杭をあえて傾けながら打ち込むことで、地震の揺れに抵抗力をつける設計にした。

斜めに杭を打ち込むのは、鉄道の本線工事では日本初だという。記者が訪れた時はちょうど杭を打ち込む準備が進められていたが、ボーリング調査の地点より硬い地盤が深い位置にあったため、杭をクレーンで吊り上げ、4度の傾きを死守しながら接木のように継ぎ足していた。

取材当日の気温は20度を超え、現場は久々の暖かい陽気を謳歌した。だが、この先厳しい寒さに見舞われる冬でも工事は休まず続く。同じ小松市にある梯(かけはし)川橋梁の建設現場では、昨年に60cm近い積雪に見舞われ、従業員総出で雪かきに奔走した。多分に漏れず人手や重機など「何もかも足りない」(木塲(こば)康幸所長)状況で、工事事務所の入口には「技術者募集」ののぼりが何本もはためいていた。

梯(かけはし)川橋梁の現場。ここまで派手な安全標識は珍しい(記者撮影)

3年間の開業前倒しもあり、工期には決して余裕はない。だが急いで工事を進めた結果、事故を起こしては元も子もない。

そこで安全教育にイラストをふんだんに使用したり、地元小松市の伝統芸能である歌舞伎を随所に盛り込んだりするなど、「視覚言語をふんだんに活用している」(木塲所長)。おかげでこれまで延べ70万時間無事故・無災害だ。

山と川、自然と対峙する難しさ

場所は変わって福井県福井市。県のシンボルである九頭竜川をまたぐ九頭竜川橋梁が建設中だ。橋上には新幹線を左右に挟む形で車道も整備され、自動車が新幹線と併走する計画だ。

橋脚はあらかじめ地上で組み立てられてから川に設置されるが、そのまま沈めても上手くいかない。そこで登場するのが「ニューマチックケーソン」という特殊な工法だ。コップをひっくり返して水中に沈めようとしても、コップの中の空気圧に押されて水がなかなか入っていかない。この原理を応用し、橋脚の下に掘削用の小部屋を作って空気を送り込み、空気圧と水圧を同じにすることで、水が作業室の中に入らないようにしつつ掘削を進めていく。掘った分だけ橋脚が自らの重みで沈んでいき、狙った場所に橋脚を設置できる。

便利な工法ではあるが、幾度となく洪水を引き起こした歴史から「崩川」とも呼ばれたと伝えられる九頭竜川が相手では、一筋縄ではいかない。「雨量の多い毎年6月中旬から10月中旬は氾濫するおそれがあるため、河川の工事が止まってしまう」(平田惣一所長)。それ以外の時期でも豪雨に見舞われるなどして上流のダムが放流を始める際にはけたたましいサイレンが鳴り響き、人も資機材もみな撤収せざるをえない。その際は河川工事ができない代わりに、陸上での高架橋建設が主となる。

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