外資が三重県に自動車部品工場を作ったワケ スペインのプレス部品大手が日本で猛攻!
新工場を見学すると、自動車の運転席・助手席と後部座席の間に位置するセンターピラーの試作品を製造中だった。1200トンの中規模ホットスタンピングラインで熱せられた製品が次々にプレスされていた。さらにその隣ではレーザー切断などによって整形が可能で、フルサービスを提供できるという。
初期投資は50億円以上、年末までに約60人の従業員を雇用し、顧客ニーズに合わせて工場拡張と人員増強を進めていく方針だ。昨年6月には東京駅近くにR&Dセンターも開設するなど日本車メーカーへの攻勢をかけている。
ただ日本勢はホットスタンプの採用率が低く、ゲスタンプの売り上げは全体の7%にとどまっている。先述した長所だけでなく、短所もあるからだ。ホットスタンプは加熱と冷却の行程があるため、サイクルタイムが長くコストがかかり、生産性が低いことがネックとなる。冷却ムラがあった場合は強度不足になりやすいなどの課題もある。
電動化や自動運転の広がりが商機
多くの日本車メーカーは今、冷間プレスのハイテン(高張力鋼板)を多用している。ハイテンは製鉄所内で熱処理をして所定の強度を得る手法だ。いわば鉄鋼メーカーが初めから高強度に作り上げており、「歴史的に鉄鋼メーカーと二人三脚でやってきた経緯があり、冷間以外でやる必要性がなかった」(中堅自動車メーカー生産担当)という。
もっとも冷間プレスは硬い材料に対する加工技術や加圧力の高いプレスなどが必要になるが、同じ時間に作れる量はホットスタンプに比べて数倍多いとされ、生産性や価格面ではホットスタンプよりも有利だ。
だが、最近は日本車メーカーの姿勢も変わりつつある。電動化や自動運転など車の機能が高度化していく中、車の重量が年々重くなっており、軽量化ニーズが一段と強まっているからだ。ホットスタンプはハイテンに比べてより高張力にできる実力を持つ。「使用量を削減して薄く軽くすることと、鉄の強度を上げて安全性を高めるという二律背反の課題に対して、ホットスタンプは解答を出せる」と大室副社長はホットスタンプの拡販に自信を示す。
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