本をよく読むのに「成績が伸びない子」の急所 4万人の子どもを調べてわかった意外な事実

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なぜ、このような発達による違いが生じるのでしょうか? 理由は2つ考えられます。

① 若い年齢ほど読書の効果が大きい

ヒトは高度に進化した脳を収容する大きな頭を持つため、ほかの動物に比べ未熟な状態で産まれます。そして生後間もなく、身体も脳も急激な発達を遂げます。

なかでも言語機能の発達のピークは8〜10歳と言われています。つまり、読書を通して得られる言語機能の発達という側面から見た効果は、中学生よりも小学生のほうが大きいと考えられるのです。

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② 学年が上がるにつれて忙しくなる

学年が上がると、単純に授業のコマ数や科目数も増えますし、学習する量も増え、難易度も上がってきます。さらに中学生になると、本格的に部活動に打ち込んだり、学習塾や習い事に取り組んだりする子どもたちも増えてきます。このように学年が上がるほど、子どもたちが自由に使える時間が少なくなります。

つまり、読書時間を確保するために勉強や睡眠など別の活動時間が削られてしまう可能性が高くなります。そうすると、読書が学力に与えるよい影響が、別の活動時間が削られる間接的な悪い影響に押されて負けてしまう可能性も必然的に高まってしまうと言えます。

川島 隆太 東北大学加齢医学研究所 所長

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かわしま りゅうた / Ryuta Kawashima

1959年生まれ。東北大学医学部卒。同大学大学院医学研究科修了。医学博士。スウェーデン王国カロリンスカ研究所客員研究員、東北大学加齢医学研究所助手、同講師を経て、東北大学加齢医学研究所教授。2014年から現職。主な受賞として、2008年「情報通信月間」総務大臣表彰、2009年科学技術分野の文部科学大臣表彰「科学技術賞」、2009年井上春成賞。2012年河北文化賞。査読付き英文学術論文400編以上、著書は『スマホが学力を破壊する』『さらば脳ブーム』『オンライン脳』など、300冊以上。

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