「偏向報道」批判は、沖縄の現実を見ていない 「沖タイ」「新報」が示すジャーナリズムの未来

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――実際に沖縄2紙の記者への評価はいかがですか。

いい記者は多いと思いますよ。でも、別に『沖縄タイムス』、『琉球新報』の記者が特段優秀でジャーナリズム性が高いとは思っているわけではありません。ではなぜ『タイムス』や『新報』がああいう記事を書けるかというと、民意に押されているからです。

「民意」に押される沖縄2紙

民意が生まれる歴史的な背景として沖縄戦があり、25年間のアメリカ軍占領地での施政があって、その延長戦上に今がある。その歴史性を肌身で感じているからこそ今の歴史問題、騒音問題というのがつねに、沖縄戦やアメリカ軍施政下の問題と直結して記事にせざるを得ない。そういう意識は本土の人たちよりも圧倒的に高い。

本では「3つの民意」と書いてますけども、辺野古の問題でいうならば、県民大会での辺野古移設反対という意思、そして世論調査、選挙の結果、プラス4つ目の民意としての記者の肌感覚もある。それらが今1つの方向に向いている。ここでぼやぼやしてたら、逆に新聞が置いてきぼりになってしまう状況だと思うんです。

――その中で、沖縄報道に限らない問題かもしれませんが、施政者が「表現の自由」を持ち出してマスコミを批判することも見受けられます。

憲法で表現の自由は保障されています。表現の自由は為政者がそれを保障する義務があるわけで、自分たちが行使することではない。にもかかわらず特に国会議員の放言、暴言を聞く限りだと「われわれには自由がある」と主張していて、大きな思い違いをしている。

そもそも、民主的な社会は表現の自由とジャーナリズムがいわば車の両輪によって支えられているという側面が強い。今の日本社会は、その表現の自由を骨抜きにするような感じが強まっている。特定秘密保護法や共謀罪をみると、例外づくりが増えているわけですね。第二次安倍政権以降、日本の戦後70年の歴史の中で特異なぐらい表現の自由を規制する立法が続々できあがってきている。

要するに為政者にとって表現の自由をいかに骨抜きにするか、例外をつくるかが意図するところなんですよ。それを意識しなければいけない。

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