日本シニアオープンで2位となった東聡は、若い頃から「練習は裏切らない」という信念で、ともかく日々、打球練習をやり続けた。ボールを打つ。打つ。打つ。打ち続けることによって、試合でその成果が必ず出るという方法だった。
「でも今振り返れば、どうしても僕はボールを打ちすぎてしまうんですよね。その傾向が結果につながるのは、若い時代なんだなと思います。体の故障(腱鞘炎など)につながったこともありましたからね。かえって逆効果だったと思います」。
かつてはジャンボ軍団の一員で、1995年には年間4勝、賞金ランキング2位となり、翌年マスターズに招待された実績を持つ。この11月で53歳になった。「打球練習とラウンド練習、それに体のケアの三つのバランスがとても大切だとわかって、それを実践したら成績もよくなりました」。
シニアツアーも今年で3年目を迎えて、何かをつかんだ。「ラウンド数を増やすことによって、ゲーム勘が養われるし、いい意味でごまかしが利くんですよ。つまり引き出しが増えて、どう対処するか、どうあきらめるか、攻めるかなどの決断力がつくんだと思います。心の動揺に対するマネジメント力なんだと思う」。
ゴルフゲームが難しいのは、ショットがよければ必ずいい結果になるという確証がないことだ。「ゴルフは、ミスのゲーム。それをどうやってつなげていけるかなんだよ。だから、耳と耳の間(頭脳)のゲームなんだよ」と名言を吐いたのは、青木功だった。いくらすばらしいショットの持ち主でも、ふとした心の動揺でそれが崩れてしまう。その崩れ落ちる心の動揺に、どう対処するのか。さらにそのミスを、自分がどういうふうに受け入れて、ピンチからチャンスに変えられるのか。
いつだったか、宮里藍が優勝争いをしていて、終盤の16番ホール第1打でミスショットをした。そのときの心模様を聞くと「ほんの一瞬、迷ったんです。風が変わって……」と言ったことがある。
逡巡(しゅんじゅん)……日本語の数の単位でいえば、逡巡は100兆分の1という小数である。ちなみに100京分の1は刹那。ウィキペディアによると『大毘婆沙論』の中では、1刹那は、75分の1秒らしい。
それほどの秒数の迷いが、ショットに影響してしまうから、ゴルフは不可思議なゲームなのだろう。1打を打つ前の心のあり方。その結果に対しての動揺。ミスをすれば、怒りが生まれる。後悔が生じる。そこでどう対処するのか……。
藤田寛之は、ミスショットをしても後悔しないという。「だって、ミスしても時間は戻せないでしょう。打った瞬間から戻せない。10をたたいても、消せない。だから、タラレバとか嫌いなんです」と、「反省するけど後悔しない」主義であることを語った。
心のショックアブソーバーの働きが、ゲームマネジメントの原点にあるのかもしれない。
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