ポルシェ「ディーゼル撤退」が示すVWの思惑 EVシフト見せつつ、実は万一に備えている

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ご存じのとおり、ポルシェは現在フォルクスワーゲングループの一員である。そのフォルクスワーゲンは時折こっそりと「ディーゼルはCO2削減にとって今後も重要な技術」と観測気球を上げているが、風向きはどうも芳しくない。世の中の人々はまだディーゼルゲート事件を忘れていないからだ。フォルクスワーゲンのディーゼルエンジンをめぐって2016年に発覚した違法行為だ。

実際、欧州の都市ではディーゼル車進入禁止を決めるケースが如実に増えている。結果、欧州でのディーゼル車の売り上げは大幅ダウンを余儀なくされ、代わりに欧州進出で長年足踏みをしていたトヨタ自動車がハイブリッドの売り上げを大幅に増やしている。

フォルクスワーゲングループは、ディーゼルを継続生産していく方法を模索する一方で、「われわれは自動車が引き起こした地球温暖化を憂慮してEV化改革を推し進める」ともアナウンスしてきた。しかし、この2つは大気汚染の問題を含めると途端に矛盾を起こす。

筆者の立場を明らかにしておくと、ディーゼルエンジンはCO2削減により温暖化防止には一定の効果があるが、同時にガソリンエンジン比で窒素酸化物(NOx)と粒状物質(PM)の排出量が多く、大気汚染面では、いまだ課題を残すエンジンだと考えている。

フォルクスワーゲンが明らかにすべきこと

最大の当事者であるフォルクスワーゲンは、ディーゼルエンジンの将来像について、CO2削減のメリットを生かして、今後も温暖化防止に貢献できるのかどうか、そのために問題となっているNOxとPMの抑制技術を開発することが可能かどうかを自ら明らかにすべきなのに、そこを巧妙に避けながら、EV化をリードする姿勢の強調によって当面の批判をかわし、にもかかわらずディーゼルへの未練が隠せない。本音と建前の混在が甚だしい。

本当ならばディーゼルゲートについてしっかり処分と反省を行ったうえで、当事者としてディーゼルエンジンの信頼回復に正面から取り組むのが筋ではないか。あるいはもしディーゼルエンジンがそれに値しないと結論しているのであれば、観測気球を上げて「ディーゼルは今後も重要な技術である」とする主張は引っ込めたほうがいいだろう。

技術的にはこういうことだ。ディーゼルエンジンはその構造上、燃料濃度を燃焼室全体で均一にすることが難しい。空気のみを予圧縮して圧縮熱で着火温度まで高めたところに、燃焼室内に直噴インジェクターから燃料を噴射して着火させる仕組みなので、燃料は空気に触れた途端燃え始め、インジェクター周辺では空燃比が濃くなり、インジェクターから離れたところでは空燃比が薄くなることを完全には防止できない。

濃い部分では燻ってPMや一酸化炭素(CO)が生成されるし、燃え残りの生ガス、つまり炭化水素(HC)が残留する。薄い部分では燃料が届く前に加熱された空気中の酸素と窒素が化合してNOxができてしまう。ディーゼルエンジンの燃焼室はこれを抑制するために一生懸命縦方向の渦(タンブル)を作り出したり、インジェクターの噴射圧力を上げたり、噴射孔の数を増やしたりと工夫を凝らしているのだが、燃料と空気を十分混ぜ合わせて均一にする前に燃え出してしまうことは原理的に防げない。そのため大気汚染公害の原因として問題になっているわけだ。

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