初試算!満員電車の経済損失は年間3240億円 首都圏の通勤時遅延、ストレスを金銭換算
まずは首都圏の電車遅延による損失から。首都圏では1カ月あたり15日以上遅れている路線も珍しくなく、芝浦工業大学の岩倉成志教授は、こうした電車遅延がもたらす経済損失は2180億円に達すると試算している(『週刊東洋経済』2009年7月4日号「満員電車も遅延も許せない!通勤問題に特効薬はあるか」)。
電車の満員状態がもたらす小さな遅延
この2180億円のうち満員電車が原因となる損失はどのくらいだろうか。国交省の調査では、遅延を30分以上の大きな遅延と30分未満の小さな遅延に分類しており、大きな遅延と小さな遅延の比率はおよそ1対9。大きな遅延の原因はほぼ人身事故で、小さな遅延はその原因の7割が電車の満員状態がもたらしたものだ。
この結果、満員電車が原因で遅延している時間は0.9×0.7=0.63。つまり全体の約6割が混雑起因によるものだと推定できる。つまり、満員状態が原因で遅延したことによる経済損失は2180億円の6割である1300億円程度になると試算できる。なお、満員電車が連鎖的に遅れを拡大していくケースもあるため満員電車が大きな遅延に無関係とは言い切れないが、今回は試算から省く。
では満員電車によるストレスを経済的損失に換算するといったいどの程度になるのだろうか。ナビタイムジャパンでは、乗換検索アプリの画面上で「どの電車がどの駅でどの程度混雑しているか」を表示している。さらにアプリ利用者がどの経路を選んだかについても分析している。そのデータを利用すると満員電車によるストレスの経済的損失を見積もることができる。
損失を見積もる方法について簡単に説明しよう。たとえば、以下のような乗換検索結果を考えてみよう。
8:00→8:40
40分 300円 混雑度6 乗り換えなし
A駅>B駅
8:00→8:30
30分 600円 混雑度6 乗り換えなし
A駅>B駅
8:00→8:50
50分 300円 混雑度4 乗り換えなし
A駅>B駅
これらの経路A・B・Cはアプリ利用者に同程度の割合で選ばれているとする。そうすると、AとBから「10分=300円」が読み取れる。また、AとCを比較すると、「10分=混雑度2段階分」が読み取れる。この結果から、「混雑度2段階分=300円」という等式が読み取れる。こうしたデータを集積することで、混雑度が与える経済損失を見積もることができる。詳しくはナビタイムジャパンの論文「電車混雑予測~混雑の可視化が社会にもたらすインパクト~」を参照していただきたい。