香港と中国本土を結ぶ「高速鉄道」期待と懸念 交通一体化で利便性向上、自治の面で反発も

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深圳北駅へ向かうMTRの高速列車「動感号」(筆者撮影)

車両はMTRが開業に合わせてCRRC(中国中車)青島四方機車車輛に発注したCRH380A型8両編成の「動感号」(Vibrant Express)と、中国鉄路の高速列車「和諧号」や「復興号」によって運行される。「動感号」は香港をイメージした“躍動する”という意味のネーミングで、主に福田、深圳北行きの短距離列車に充当され、最高速度は時速200km。それ以外の中・長距離列車は和諧号や復興号が中国側乗務員の担当によって相互乗入れを行っている。

高速鉄道専用として新たに建設された西九龍駅舎(筆者撮影)

開業日当日、MTRのWebサイトであらかじめ予約と支払いを済ませた確認書を持参し、香港西九龍駅へ向かった。同駅はMTR西鉄線の柯士甸(オースティン)駅と機場快線(空港特急)・東涌線の九龍駅に挟まれた場所に、新たに地上3階・地下4階の駅舎が建設された。MTRの両駅とは、ブリッジや地下通路で結ばれている。駅にはレストラン、売店、銀行(両替所)などもある。

確認書は地下1階の窓口カウンターで乗車券に引き換える必要があり、外国人はパスポートの提示が必須となっている。チケットにはパスポートナンバーと氏名が英字で印字されていた。予約していない場合は窓口で購入することも可能だが、発券は列車出発時間の60分前で終了。同じく45分前までに改札ゲートを通過しなければならない。

利便性か自治か「一地両検」

西九龍駅から列車に乗車する場合、目的地の駅はすべて中国本土となるので、駅構内で香港から出境(出国)し、さらに中国へ入境(入国)する必要がある。

ゲートの先では、まず空港同様セキュリティ検査がある。持込手荷物は、縦・横・高さのトータルが130cm、重さは20kgまでと制限があり、それを超えると超過料金が課せられる。エスカレーターで地下3階の離港大堂へ降りると、香港側のイミグレーションと税関があり、パスポートとチケットを提示してここを通過する。

香港側(手前)と中国側の間にある黄色の太いライン。西九龍駅構内で香港と中国の出境・入境手続きを同時に済ませるシステムだ(筆者撮影)

免税店が並ぶ店舗を過ぎると、床に香港と中国本土の境を示す太い黄色のラインがある。このラインを越えるとその先に中国側のイミグレーションと税関があり、中国への入境手続きを済ませる。同じ駅舎内で香港と中国との出入境手続きを済ませるこのシステムは「一地両検」と呼ばれる。近くでは中国の公安(警察)が不審者がいないか目を光らせており緊張する。

この「一地両検」について、香港政府は乗客の利便性を考えたと説明している。だが、1国2制度で本来は独自の法律が適用される香港にありながら、駅構内の一部や列車内では中国の法律が適用されることになるため、香港の自治が失われると香港民主派の人々は反対している。当日も駅舎の外では撤廃を求める集会が行われていた。

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