香港と中国本土を結ぶ「高速鉄道」期待と懸念 交通一体化で利便性向上、自治の面で反発も

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車体側面に入った「動感号」のロゴ(筆者撮影)

中国の入境手続きを済ませると、その先には広い列車待合室がある。吹き抜けになっており採光もよく清潔で明るいイメージだ。地下2階には1等車の乗客専用ラウンジもある。ホームは全部で14もあり、列車出発時間に合わせてホームごとにもう一度自動改札を通過しなければならない。最初に入場してからここまでの時間を考えると、最低でも30分の余裕がないと乗り遅れてしまう可能性もある。

改札が始まると地下4階のホームへエスカレーターで降りてやっと列車に乗車することができる。動感号用のホームと長距離列車用の16両編成対応のホームとに分かれているが、他のホームへ移動することはできない構造になっている。

中国に直結した香港の将来は

MTRの動感号は8両編成で579席。両先頭車が1等車で2+2席(一部1+2席)で68席。中間車6両が2等車で2+3席の511席となっている。

動感号の1等車内。シートは2+2列(一部1+2)の配置でゆったりしている(筆者撮影)

短距離用であり、車内はビジネス特急のイメージとなっておりシンプルだ。デッキには給湯器、客室内には荷物用ラック、天井に液晶モニターが設置されている。無料Wi-Fiサービス、充電用コンセント、1等車のシートには読書灯、音楽サービスチャンネルソケットの設備がある。現在9編成(72両)が投入されている。

西九龍駅を発車してしばらくすると、車端部の電光掲示板に示されたスピードは時速180km前後を表示していた。次の福田駅は通過し、トンネルから出ると減速してわずか19分の列車の旅は終了した。西九龍駅で中国の入境手続きは終了しているので、ここでは自動改札から出るのみで済む。深圳北駅は高速鉄道の専用駅で、駅構内は多くの乗客であふれかえっていた。

動感号の2等車(普通車)内(筆者撮影)

中国の高速鉄道網は2018年に2万5000kmに達し、世界一となっている。さらに「八縦八横」と呼ばれる高速鉄道建設計画が国務院より答申され、2020年には3万km以上、2030年には4万5000kmに達すると発表されている。香港も、今回の新線開業でこの高速鉄道網に組み込まれたことになる。

高速鉄道網によって中国の各都市と直結したことで、利便性の向上や経済のさらなる発展に期待が集まる一方、「一地両検」に見られる中国の影響力の拡大に反発や懸念の声もある。高速鉄道は社会や経済にどのような影響をもたらすか、イギリスから中国に返還されて今年で21年を迎えた香港の将来を見守りたい。

三浦 一幹 トラン・デュ・モンド代表

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みうら かずみき

1960年東京生まれ。世界の鉄道フォト・ライブラリー「トラン・デュ・モンド」代表。世界各国の鉄道取材・撮影にあたる。海外鉄道研究会、日本旅行作家協会会員。

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