日本を守るために必要な移民政策の「鉄則」 外国人差別はNGだが「自国民優先」は当然だ

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外国人労働者の受け入れは、社会に極めて重大な影響を与えるため、国民による十分な議論が必要である。しかし、移民政策に関して世界で確立された「常識」が日本では共有されておらず、そのため議論に混乱がみられる。

また、受け入れを急ぐあまり、法制度も不十分なものとなる可能性がある。移民の受け入れは社会の分断、混乱、治安悪化を生みやすく、決して「きれいごと」だけではすまない。慎重のうえにも慎重を期して検討する必要があるのだ。

そもそも、人類の歴史上、移民政策を完全に成功させた国は1つもないと言っていい。

上の表は諸外国における外国人単純労働者受け入れ制度を比較したものである。これを見れば明らかなとおり、単純労働者の受け入れについては、「期間限定かつ家族帯同を認めない」のが、世界の移民政策の常識である。この点は、「特定技能」に係る政府案も同じであり、妥当である。

移民と難民は異なる

家族帯同を認めないということについては、人権侵害であると批判する人がいるだろう。心情的にはよくわかるものの、法的にはその批判は成り立たない。移民は難民とは異なり、どの国家も受け入れ義務を負わず、外国人に他国への入国や在留を求める権利はないからである。

これについては最高裁判所の判例があり、各国政府は、政策目的達成の観点から、合理的な受け入れ要件を裁量的に設定することができる。家族帯同を認めた場合、法で認められた滞在期間が過ぎても、子どもの学校などの関係で帰国させることが実際上できなくなり、定住化に直結する。現在の日本のように、教育や相談体制を含め、外国人に係る社会統合政策が不十分なままで、しかも単純労働であるがゆえに経済基盤が安定しない状態で家族まで受け入れることは、当該家族自身にとっても不幸な事態となる可能性が高い。

もっとも、日本在留中に一定以上の技能レベルを習得した外国人については、一定期間後に帰国させなくても、生活保護などの公的負担になる可能性が低く、日本への定住を認めることにメリットがある。優秀な人材については帰国させなくてよく、雇用し続けられるとしたほうが、企業の人材教育への投資意欲が高まり、生産性向上にもつながるだろう。「特定技能」に係る政府案も、この考え方をとっている。

なお、「家族帯同を認めない」というのは、本国での家族と一緒での在留を認めないということを意味する。したがって、「特定技能」で来日してから知り合った日本人や適法に滞在する外国人と結婚したり出産したりして、日本でともに暮らすことは当然に認められる。そのほか、日本に受け入れた以上は、可能な限り、人権を保障しなければならない。

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