そして個人的には、覚悟を決めた若者たちのために、死守しなければならない目標だとも思っていた。
パソコン初心者をネット店舗の店長に抜擢
ゆきなは復興支援のボランティアのため、千葉からひょっこりやって来た、パソコンに触ったこともないような女の子だった。 ともみは石巻の隣の女川の子で、フリーでデザインの仕事をしていたが、もとは地元のちょっとちゃらい女の子。
2人とも企業向けの書類なんてまともに作れないというようなビジネススキルだった。そんな女の子たちが日々奮闘し、その活躍が認められ、2年半後、社会貢献的にも、ビジネス的にもたいへん名誉な賞をいただくまでになった。
今では、ゆきななんて、ノートパソコンのキーボードが壊れるくらいたたきまくり、毎日、仕事のメールのやり取りをしたり、売り上げを管理したりしている。すごい成長だ。
どうやってここまできたのか?
まずはeコマースの基本をたたき込む必要があった。TOPページやナビゲーション、いかに写真が重要か、商品説明の書き方や商品の値段設定、送料とのバランス、受発注のオペレーションや、買ってくれたお客様への「おもてなし」などなど。
これは通称「小澤先生」、われわれより年配のヤフー社員で、当時、部署が違ったのに手を貸してくれた中小企業診断士・小澤がびしっと土台の教育を行ってくれた。
石巻元気商店の立ち上げを支えてくれたカメラマン、平井慶祐さん(ケースケさん)の写真は、当時も今も、石巻の生産者やその商品の見た目的なすばらしさだけではなく、背景やその人の内面も写し出してくれている。これには本当に日々感謝している(東洋経済に掲載させていただいているすてきな写真は、ほとんどケースケさんに撮ってもらったものだ)。
ボランティアからビジネスへ
この事業はボランティアの延長から生まれたところがある。
小澤先生が彼女たちに言った言葉。
「いつまでもボランティアの気持ちでいると、生産者のほうばかり見てしまう。商売はお客さんのほうを見なければ成り立たないよ。生産者と一緒に、お客さんのことを考えて商売をしないと」
当初、仕入先のお店には「ちょっといただければいいです」と手数料もボランティア価格だった。が、次第に、そのままでは事業が存続できないことがわかってきた。彼女たち同様、多くのボランティア団体や社会貢献活動は、このあたりが難しい。ビジネスだったらきっちりいただくべきところを、もらいにいかなかったり、状況的にもらいにくかったりでおカネに変えられず、結果的に事業撤退に追い込まれるケースも多い。
彼女たちは苦渋の決断をして、手数料のパーセンテージを若干上げさせてもらう交渉をした。
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