人材問題を克服できなければ生命力を保てない日本の政党

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人材問題を克服できなければ生命力を保てない日本の政党

塩田潮

 アメリカで次期大統領が決まった。
 4年に1度の大統領選挙は出馬準備から党の指名を争う予備選を経て本選挙まで約2年をかける長丁場だ。候補者はその期間、あらゆる角度から政治指導者としての適格性についてチェックを受けるという苛酷なレースを戦う。

 一方、日本の首相は、まず国会議員になり、その後は最大与党の党首の座を射止めれば、ほぼ自動的に最高権力者に到達する。チェックするのは当該選挙区の有権者と与党の党員や所属国会議員だけだ。政治リーダーの人材の発掘・養成・活用という面でアメリカのほうが優れていると見る人も多い。だが、アメリカの大統領は4年間は安泰だが、逆に日本の首相は就任の瞬間から与野党、国民世論、マスコミなどの厳しいチェックを受け続けるという違いがある。

 1989年以降の20年間で首相が14人就任したという実態は、就任後の人物チェックがいかに苛酷で、多くの首相がそれに耐えられなかったかという事実を物語っている。
ところが、おもしろいことに企業経営の世界では事情は反対だ。アメリカではトップは株主や消費者などの厳しいチェックに日々さらされる。日本では社長到達レースは長期で苛烈だが、トップに立てば在任期間中はほぼ安定して経営の采配を振るうことができるという企業が多い。それが日本的経営の強みとよさの一つといわれている。

 日本流の政治リーダーの選び方は、安定期や成長期なら必ずしも悪いとはいえない。だが、現代のように強力なリーダーシップが求められる転換期や変革期には無力で、限界と機能不全が露呈する。現代の深刻な政治危機の第一の原因は実は「人材の危機」にある。いまは二大政党政治が定着するかどうかの過渡期だが、長期的に見てこれからの政党は政治の世界の人材問題を克服しない限り生命力を保つことができないと自覚すべきだろう。

塩田潮(しおた・うしお)
ノンフィクション作家・評論家。
1946(昭和21)年、高知県生まれ。慶応義塾大学法学部政治学科を卒業。
処女作『霞が関が震えた日』で第5回講談社ノンフィクション賞を受賞。著書は他に『大いなる影法師-代議士秘書の野望と挫折』『「昭和の教祖」安岡正篤の真実』『日本国憲法をつくった男-宰相幣原喜重郎』『「昭和の怪物」岸信介の真実』『金融崩壊-昭和経済恐慌からのメッセージ』『郵政最終戦争』『田中角栄失脚』『出処進退の研究-政治家の本質は退き際に表れる』『安倍晋三の力量』『昭和30年代-「奇跡」と呼ばれた時代の開拓者たち』『危機の政権』など多数
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