家裁への報告義務無視し不正が長期化
その原因は、①そもそも資質に問題がある人物であることを家裁が見抜けないということ、②そして家裁への定期報告義務を怠る後見人に対し、家裁が強い態度で臨んできたとは言い難いということ、③そして本人の親族の弁護士への盲目的な信頼と無関心――この3つに尽きるのではないだろうか。
刑事事件化するほどの不正を働いた弁護士の中には、弁護士会の幹部を務めた人物も含まれているし、過去に懲戒歴がある弁護士も9人中2人だけ。その弁護士が食い詰めているかどうかといったことや、交通の便が悪い病院や老人ホームに定期的に本人を訪ね、本人と丁寧な対話を重ねられるような人物なのかどうか。それを家庭裁判所に見抜けるのかどうかは極めて疑問なので、入り口の部分で、資質に問題がある弁護士を排除できないということについては理解ができる。
ただ、問題は②だ。後見人は家裁に対し、定期的な報告を行う義務があるのだが、報告サイクルや報告内容は各家裁、担当裁判官、そして事案によって実にさまざまで、必ずしも1年に1度というわけでもない。だが、いずれにしても報告書の内容の精査と、報告を怠っている後見人弁護士への追及を家裁が徹底していれば、早い段階で不正に気づくはずだろう。
一般に成年後見人弁護士による財産の流用は、被後見人本人の死亡によって初めて発覚するという。しかも不正を働いた後見人弁護士が口を割らなければ、実際にいくらを流用されたのかを知る術は親族にはない。後見開始時点でいくらの資産があったということを把握できるだけで、その後の増減は後見人弁護士のみぞ知るのである。
家裁の監督強化で大量の不正が暴かれる
親族がなかなか後見人弁護士の不正に気づかないのは、家裁が選任した弁護士であるがゆえに盲目的に信用しているからということがある。被後見人を後見人弁護士がほとんど訪問していないという事実を、親族が把握できていないということは、親族も後見人の行動、もっと言えば被後見人に対して無関心だということになる。
親族以外の第三者に後見人を任せるというケースは、親族間に財産争いがあったり、そもそも財産争いになることが嫌で、お互いかかわりたくないという気持ちが親族間にあったりする場合が多い。無関心になりやすい土壌はある。
もっとも、家裁に提出される報告書を親族が閲覧することは許されない。親族と言えども、本人の同意なしに本人のプライバシーに関する報告書を見ることは許されない。そうなると、やはり家裁の監督強化以外に後見人の不正を防止する手段はないだろう。
後見人に監督人をつける方法もあるが、よほど信頼できる人物や組織に頼まないと、監督人と後見人がグルになるということもありうる。
今後、家裁が後見人の監督を強化していくことは間違いない。まだ表面化していない不正が本格的、かつ大量に暴かれる可能性もある。
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