「同類婚」志向で広がる、夫婦間の貧富の差 夫年収100万円台でも過半は妻の方が低収入

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これは、同じ年収レベル同士の結婚が増えると、低所得同士の夫婦と高所得同士の夫婦との間に大きな世帯所得格差が必然的に生まれてしまうという現象です。以前、大卒同士が結び付く「学歴の同類婚」が進んでいるというお話をしましたが(結婚できない男を阻む「見えない学歴の壁」)、同様に、「所得の同類婚」も進んでいるといえます。

かつて専業主婦形態が大半を占めていた時代までは、夫の収入=家計の収入でした。妻がパートなどで共働きといっても、配偶者控除の面から妻の年収は100万円程度に抑えられていました。よって、夫の所得に格差があったとしても、世帯間の所得格差というものはそれほど広がらなかったのです。

「所得の同類婚」の進行で起きていること

しかし、同じ共働きでも、「所得の同類婚」が進むと、低所得者同士の夫婦と高所得同士の夫婦との夫婦間の所得格差はますます広がり、グラフに示したような二極化が促進されてしまいます。かつては、300万円夫+パート妻100万の400万夫婦と、600万夫と専業主婦妻の600万円夫婦では、夫婦間所得格差は200万円差で済んだものが、「所得の同類婚」が進むことによって、下手をすると400万円夫婦vs.1200万円以上夫婦という、3倍も所得差のある夫婦が増えていくことになります。

もちろん、こうした格差は、子どもの有無や居住エリアによっても大きく左右されます。グラフの赤点線で示したように、30代が世帯主である世帯の総数の年収分布は400万~600万円がボリューム層で、これは結局出産・子育てによって共働きを辞めざるをえない夫婦が多いことを示唆しています。皮肉な見方をすれば、結婚時点の夫婦間格差は子育て時期による妻の離職によって、結果的に解消されているとも言えます。

以上のように、結婚した夫婦の実態を探っていくと、現実的には、必ずしも男側に「金がないと結婚できない」わけではないことがわかりますが、一方、「所得の同類婚」の進行で、夫婦間の格差が広がっていたことや、子育て時の妻の離職によって結局夫の収入に頼らざるをえない現実などいろいろな問題が浮き彫りになります。むしろ「結婚したあとも金が問題になる」のです。結婚とはやはり経済問題なのです。

荒川 和久 独身研究家、コラムニスト

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あらかわ かずひさ / Kazuhisa Arakawa

ソロ社会および独身男女の行動や消費を研究する独身生活者研究の第一人者として、テレビ・ラジオ・新聞・雑誌・Webメディアなどに多数出演。著書に『「居場所がない」人たち』(小学館新書)、『知らないとヤバい ソロ社会マーケティングの本質』(ぱる出版)、『「一人で生きる」が当たり前になる社会』(ディスカヴァー携書)(ディスカヴァー携書)、『結婚滅亡』(あさ出版)、『ソロエコノミーの襲来』(ワニブックスPLUS新書)、『超ソロ社会』(PHP新書)、がある。

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