「自分のマナーは大丈夫」と油断する人の盲点 取引先や上司を快適にすることも仕事のウチ

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そこから先は、案内をしてくれる受付の社員含め、かかわる相手全員に対し、とにかく低姿勢でいることに徹底する。自分がどれだけ業界で評価されていようが、そこは関係ない。低姿勢でいることにより「あの人はあれだけ実績があるのに腰が低い感じのいい人だ」という評価を得られる。それだけで仕事がうまく回ることが多いし、客先の別の社員を紹介されたとしても、丁寧に接してもらえる。この点については、今回紹介したマナー本でも提唱されている教えとまったく同じである。

ただ、これから紹介する「年上」「年下」との接し方については、低姿勢でいること以外の振る舞いが必要になってくる。以下は、完全に私独自のマナーである。

相手の年齢で「態度を変える」生存戦略

2.年上が相手の場合

基本的には「小僧」的な態度に徹することを心掛けている。世の中には年齢が自分よりも下ということがわかるだけで、ぞんざいな態度を取る人がいる。だったら逆の手法を取れば相手は気持ちよくなる、ということも意味するわけだ。

年上が相手だった場合の基本は、太鼓持ちの役割を心掛け、丁寧な言葉遣いをし、とにかく褒めて恐縮することに徹する。これは年長者を気持ちよくするということに加え、その同僚や部下に対しても好印象を与えることが多い。

3.年下が相手の場合

相手が年下の場合も、同様に丁寧な対応を心掛けており、その方法は極めて簡単である。相手の名前を「さん付け」し、「敬語でしゃべる」だけ。さらに折りに触れ、手土産を持っていけば完璧だ。

というのも、基本的に若い人は社内で雑な扱いをされるうえに、前出の「年下に敬語を使えない年長者」により、理不尽な扱いを受けがちだからである(あくまで筆者が主戦場とする広告・出版業界においてだが)。

結局ビジネスにおける評価というのは相対評価なので、若い自分に対しても丁寧に接してくれる外部の人間というのは、その人からすればホッとできる存在なのだ。「あの人は傲慢ではない」程度の評価であろうとも、仕事をまた発注してくれる可能性は高い。

これまでマナー本を読んだ経験がなかった私はその価値を侮っていた。冒頭で「複雑な気持ちになった」とも書いたが、その前提をもとに自分自身の無手勝流マナーを振り返ってみると、案外マナー本の教えには納得できることも多いし、反省できるものもあることに気づく。そうした意味で、マナー本にもそれぞれの価値があり、その大前提を押さえたうえで自分なりのマナーを確立すべし。45年の人生で初めてマナー本を読んで、そう思った次第である。

中川 淳一郎 著述家、コメンテーター

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なかがわ じゅんいちろう / Junichiro Nakagawa

1973年東京都生まれ。1997年一橋大学商学部卒業後、博報堂入社。博報堂ではCC局(現PR戦略局)に配属され、企業のPR業務に携わる。2001年に退社後、雑誌ライターや『テレビブロス』編集者などを経て、出版社系ネットニュースサイトの先鞭となった『NEWSポストセブン』の立ち上げから編集者として関わり、並行してPRプランナーとしても活動。2020年8月31日に「セミリタイア」を宣言し、ネットニュース編集およびPRプランニングの第一線から退く。同年11月1日、佐賀県唐津市へ移住。ABEMAのニュースチャンネル『ABEMA Prime』にコメンテーターとして出演中。週刊新潮「この連載はミスリードです」他連載多数。

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