「自分のマナーは大丈夫」と油断する人の盲点 取引先や上司を快適にすることも仕事のウチ

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こうした点から考えると、結局マナーというのは「自分にとっていかに心地よいか」という話になってきて、絶対的な正解はないのではないかと思う。もしそうだとした場合、この原稿で私が語れることは「嫌われることもあるけど、フリーランスとして17年、一度も仕事が途切れたことのない45歳男がこれまで実践してきたマナー術」かもしれない。

私自身は大学を卒業してから、業界2番手の広告代理店の社員を4年経験した。独立してからはフリーランスとして17年働いているが、“年上と年下の相手の機微を読む”ことで、仕事が途切れることはなかったと思っている。「年齢で態度を変えるなんて失礼じゃないか」と思われる方もいるかもしれない。だが、私の知るかぎりでは多くの社会人は相手の年齢によって態度を変えている。なので、そこに合わせることも必要だろう。

なお、会社員を相手とする仕事の場合、「より社畜的」なマナーのほうがうまくいくことが多い。つまり、旧来型の会社員が実践していたような「様式美」を徹底することである。

もともと私が、マナーについて識者として意見を求められるようになったきっかけは、「ライムスター宇多丸のウィークエンド・シャッフル」(TBSラジオ)というラジオ番組にある。2011年5月に同番組で、私は「新・社会人のための素敵な真・社畜特集!」という特集に識者として出演し、社会人が実践すべきマナーを語ったり、マナーにまつわるリスナーの悩みに回答したりした。

番組はパーソナリティの宇多丸さんが、私と番組プロデューサーである橋本吉史氏との社畜的なやり取りにツッコミを入れ、正しいマナーについて解説していくという流れになった。ちなみに、私が登場したとき、橋本氏はスタジオ内の席に座らずに立っていた。これは冒頭で紹介した『この一冊でもう困らない マナーのツボ大事典』とも関連した作法である。商談などが始まるにあたり席に通された場合、「相手が来たら立つというマナー」があるが、これをさらに発展させ「とにかく相手が来るまで立っておく」という、より「社畜度合い」の高い振る舞いを実践したのだ。

宇多丸さんが「なんで立ってるの?」と聞いたところ、一応はゲストかつ彼よりも年上かつ大学のプロレス研究会の先輩である私を立てるべく「社畜たるもの立っておくべきだ」と橋本氏は答えた。番組は終始こんな感じで、会社勤めの経験がない宇多丸さんはとても感心してくれた。

45年生きて有効だと思ったビジネスマナー

冷静に見ると、こうしたビジネスマナーには「バカっぽく見える」ものや、「大げさ・やりすぎに見える」ものもある。しかし案外、相手に好印象を与えることも多い。以下、私が45年生きて有効だと思った、ビジネスマナーを3つのシチュエーションに分けて紹介しよう。

1.歴史の古い会社の社員が相手の場合

基本的には役職が上か下か、客が下請けか、というだけで判断する。とにかく「客が偉い」という意識を持ち、「(関係会社・自社ともに)役職が上のほうが偉い」というだけの判断基準で発言・行動する。打ち合わせで客先に行く場合は、相手先のビルに入った途端にコートを脱ぎ、いつクライアントの誰が見ていようが、「あいつはわが社の中に入っているというのにコートを着続けていた」と言われないよう万全を期す。

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