安倍首相は、早期にレームダック化する懸念 自民総裁選で浮上した政治リスク
しかし、今回の結果をもって、政治的な不透明感が消えたわけではない。むしろリスクは高まったとの指摘も出ている。
下馬評では、石破氏が250以上の議席をとれば善戦とみられていたが、実際の得票数は254。市場では「実質的な選挙期間が短くなり、各方面への締め付けも強かったとみられるなかでのこの数字は、安倍陣営にとって厳しい結果だ」(国内投信役員)との受け止めが多い。
来年には、統一地方選と参院選が控える。今度は自民党としての戦いであり、野党の勢いが弱いなかでは、大敗は考えにくいとの見方もある。しかし、今回の自民総裁選の結果が「独善的な手法が目立つ安倍首相へのお灸」(同)とするなら、結果はわからない。大敗となれば安倍首相の責任論が浮上するのは必至だ。
三菱UFJモルガン・スタンレー証券のシニアマーケットエコノミスト、六車治美氏は、石破氏の善戦により、自民党内で安倍首相の政治手法に対して批判をしやすくなったと指摘。「来年の選挙結果次第で、安倍首相が早期退陣を迫られるリスクシナリオを市場は、意識する必要もありそうだ」とみる。
乏しかった議論
自民党にとって大きな問題なのは、この総裁選の期間中に議論が深まらなかったとみられていることだ。
「2人の議論はかみ合わず、石破氏の政策論にも具体策は乏しかった。ポスト安倍としての石破氏の存在感が高まったとは言えない」とニッセイ基礎研究所・チーフエコノミスト、矢嶋康次氏はみる。「1年後ぐらいには、安倍氏のレームダック化が始まり、次期候補がみえないなかで、市場が不安定化する可能性もある」という。
北海道地震の影響や安倍首相のロシア訪問で、実質的な総裁選の期間は短かった。選挙期間中に、社会保障における負担と給付の割合や、2%物価目標の是非など、日本の将来を決める問題について、十分に議論されたとはみられていない。
年金など社会保障問題の改革が再び先送りされれば、将来の不安は消えず、個人消費の本格的な回復や内需主導の景気回復への期待感は高まらない。いわゆるデフレマインドの払拭も遠のく。
市場が注目するのは、今後の組閣と内閣支持率。党内活性化を感じさせるような人事で、安倍首相が求心力や人気を回復することができるかが焦点だ。石破氏や同氏に投票したとされる小泉進次郎・筆頭副幹事長の処遇がポイントになろう。
(伊賀大記 編集:田巻一彦)
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