リンガーハット、690円贅沢メニューの衝撃 「プレミアムちゃんぽん」に秘められた戦略

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店内はカウンター席とテーブル席がある(編集部撮影)

とはいえ、店の雰囲気はともかく、メニューにはあまり違いがないようだ。「どこがプレミアムなの?」という好奇心に対し、「100円増しでちょっとリッチ」な部分は正直なところわかりにくいかもしれない。しかし、それでも集客が落ちないということは、価値が伝わっているということだろう。

また、リンガーハットのファンは価格アップに寛大であるともいえるかもしれない。近年の天候不順により、リンガーハットでは8月に商品の価格を改定。21品のうち主要な13品において、平均3.3%の値上げに踏み切った。

「改定後お客様がどの程度減少するのかと、心配でした。しかしふたをあけてみると変わらなかった。また、『10円アップしても国産を守る姿勢を評価する』とメールでご意見をくださった方もいます」(堀江氏)

同社が最近、特に注目されている理由として、国産野菜、小麦粉や保存料や合成着色料不使用などを打ち出し、材料の原産地情報を発信するなど、食の安心・安全に力を入れていることが大きい。転機が訪れたのは2009年だ。

野菜の国産化を断行

「会長の米濵和英が、ぜひやってみたいと、社内の反対を押し切って野菜の国産化を断行しました。米濵は創業者であり、1店舗から始めた当時は当然、国産の野菜を使っていました。それが店舗数を増やしてからは全面国産野菜は厳しく、使用量が多いキャベツ・モヤシのみに留まっていた。会長には、いつか原点に戻りたいという想いがあったようです」(堀江氏)

米濵会長のこだわりには理由があった。長崎ちゃんぽんは地元の人にとってソウルフードであり、また、1食で野菜、魚介、肉がバランスよくとれるヘルシーな食事、というイメージが強く定着している。地元の人にとって、ちゃんぽんとは、家庭の食事のように安心感のある食事なのだ。

プレミアム長崎皿うどん720円(編集部撮影)

また、当時ちょうど、中国製冷凍ぎょうざの異物混入事件が起こり、食の安全・安心について、社会的に取り上げられた。食材について再検討するのにふさわしい時期だったのだ。

そのほか、大きな改革を可能とする体力が蓄えられていたことも大きいだろう。もともとロードサイド店中心に店舗拡大を進めてきたが、2005〜2006年あたりから商業施設内のフードコートなどに出店するようになり、大きく店舗数が伸びた。店舗を飛躍的に拡大できた背景には、“厨房の改革”がある。中華鍋を使用して調理するいわば手づくりの方式から、IHなどを使う電気式の調理システムへと切り替えた。味のばらつきがなくなり、調理スピードがアップ。また、火をあまり使わないので厨房温度が高くならず、油汚れも少ない、力のいる“鍋振り”もなく、作業がラク、といった点で、労働環境が改善されたという。

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