「スマホ・動画・縦」という定石の意外な盲点 人間の目はそんなに都合良くできていない

著者フォロー
ブックマーク

記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
はこちら

印刷ページの表示はログインが必要です。

無料会員登録はこちら

はこちら

縮小

確かにスマホの画面は縦長なので、動画もそれに合わせて「縦動画」にするほうがいいような気もします。また、多くの動画は今まで「横長」でつくられてきたので、スマホでそのまま表示するとサイズが小さくなってしまいます。

スマホを横向きにすればフルサイズで観ることができますが、通常スマホは縦に使うので、わざわざ横向きにして観るのは面倒くさいですよね。ですから「縦のままフルサイズの動画を楽しみたいというニーズに対応しよう」ということになります。

「SHOWROOM」を始め、縦動画で成功しているサービスも多く、現在、さまざまなメディアが縦動画を強く意識しています。最近ではInstagramが「IGTV」を発表して話題です。

「IGTV」は「縦動画であることを武器にスマホへの最適化を図り、YouTubeなどに対抗しようとしている」とも言われます。では、スマホ動画の世界は今後、縦動画が主流になっていくのでしょうか。

答えとしては、縦動画が多くなると思います。しかし、これはあくまで「スマホというデバイス」を主語に考えた場合で、ほかにも考慮すべきものがあります。それは、「動画を観る人」です。「スマホに最適化する」のは、スマホで動画コンテンツを楽しんでもらうための「手段」であり、最適化すること自体が「目的」ではありません。

そうなると「スマホで動画を観る人」の視点も考える必要が出てきます。

テクノロジーが進歩しても、人間の生理は変わらない

人は動画を何で見ているでしょうか。そうです。目で見ています。

拙著『人がうごく コンテンツのつくり方』でも詳しく解説していますが、人間の目は、横に2つ並んでいます。人間の一般的な視野は横に180~200度、縦に120~130度と言われています。テレビがハイビジョンになったとき、画角がそれまでの4:3から16:9に変わったのにはさまざまな歴史や理由があるのですが、これを決める以前に、NHK放送技術研究所がアンケートを実施しています。このとき、最も好まれた画角は5:3だったそうです。この5:3というのは、ほぼ「黄金比」であったりもします。

人がスマホの画面を見るとき、縦長には見ておらず、5:3くらいの横長の映像を上下しながら見ているということです。スマホでネットニュースなどを読むとき、スクロールしながらテキストを読んでいる情景を思い出してみるといいでしょう。基本的には画面の中心しか見ていないことに気づくと思います。つまり縦動画は「デバイスに最適化しているかもしれないけど、人の生理からは少し外れている」ということになります。

『人がうごく コンテンツのつくり方』(クロスメディア・パブリッシング)書影をクリックするとアマゾンのサイトにジャンプします

「横長推しの人はテレビに慣れて育ったからだ。子供のころから縦動画に慣れた若者は縦でも違和感がなくなるはず」という意見もあります。たしかに慣れるということはありますが、人の生理に基づいて考えると、横長でものを見るほうが自然ではあります。これは、世代や生活環境とは関係ありません。そもそも、スマホはなぜ縦長なのかを考えてみると、手で持ちやすいからです。ワンハンドで使いやすいように、手のひらと指で支え、親指で操作することができるようにデザインされています。

スマホ視聴を意識した縦動画コンテンツをつくる際には、こういった視点を考慮すると、より多くの人に受け入れられるものがつくれるはずです。

世の中の変化は「人の欲」とリンクしています。もっと「便利に」「楽に」「簡単に」といった、人の欲をかなえてきたのがテクノロジーです。世の流れは、「人の欲」と「テクノロジーの進歩」によって起きます。新しいコンテンツをつくり世に出そうとするとき、テクノロジーは大きな武器になります。その際「人の生理」についても同時に考えることは、今後ますます重要になっていくでしょう。

高瀬 敦也 コンテンツプロデューサー

著者をフォローすると、最新記事をメールでお知らせします。右上のボタンからフォローください。

たかせ あつや / Atsuya Takase

株式会社ジェネレートワン代表取締役CEO。1998年フジテレビ入社、営業局にてスポットセールスプランニングに従事。その後、編成制作局にて「逃走中」「戦闘中」「Numer0n(ヌメロン)」など企画性の高い番組を多数企画。「逃走中」「戦闘中」ではニンテンドー3DSのゲームもプロデュースし、シリーズ累計100万本を超えるセールスを達成。「Numer0n」ではアプリ化を前提とした企画としてゲーム内容からデザインし、スマートフォンアプリは350万ダウンロードを記録。また、DJ活動も行い、自身もソロアルバム(CD)を全国リリース。フジテレビを退社した現在、さまざまな業種の新事業企画、新商品企画、広告プロモーション戦略立案など、幅広いコンテンツプロデュース・コンサルティングを行っている。

この著者の記事一覧はこちら
ブックマーク

記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
はこちら

印刷ページの表示はログインが必要です。

無料会員登録はこちら

はこちら

関連記事
トピックボードAD
ビジネスの人気記事