夢の田舎暮らしにつきまとう「耳を疑う」現実 ムラ意識の強く残る地方で嫌われない条件

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ムラ意識とは、究極には無条件に習慣を踏襲し、全体に一切抗わない生き方であり、それは地方や過疎地にだけあるものではなく、何よりも移住を希望する都会の人間の内側にも、潜むものとも言えるからだ。自分自身が何十年と培ってきた習慣や価値観をそうたやすく変えられないのと同様に、移住先の人々もそれは同様なのだ。たどり着いた覚悟は、次の一言に集約される。
最悪の状況を理解すること、想定することに勝る成功への王道はない――(「はじめに」より)

想定外の事情というものは、極めて大きなストレスを生み出すことになり、あとからでは取り返しがつかないこともある。しかし「想定内」「織り込み済み」であれば、事情は変わってくるということ。そこで本書では、著者自身の経験を軸として、移住を成功させるためのノウハウや考え方を明らかにしているわけである。

「快適さ」を実現するための「条件」

ところで、地方への移住を希望する都市生活者は、移住にどんなことを望んでいるのだろう? この問いに対する明確な答えのひとつが、「快適さ」なのではないだろうか。豊かな自然、ゆったりと流れる時間、温かい人間関係――などなど、多くの人が快適な田舎暮らしをイメージし、憧れを抱いているであろうということだ。

しかし「快適さ」が千差万別ではあるとはいえ、それを実現する最低限の「条件」はあると著者は記している。

具体的には、ムラ意識の強く残る地方でのそれは、頭を下げることと、場合によっては貢ぐことなのだそうだ。それらは現在でも、地元住民は年齢に関係なく、自らが「和」を保つ作法として日々実践しているというのである。

だとすれば、引っ越しの挨拶すらしなくなった都会の感覚をそのまま持ち込めば、誤解の目を向けられるのは当然なのかもしれない。移住までの長い道のりを越えればすべてが解決するわけではなく、移住後の振る舞いも徹底した者でなければ、息が詰まるのが田舎暮らしの掟だということだ。

だからこそ、これだけは守るべき、という鉄則があるのだ。
それを一歩でも外してしまえば、そこから先は保証の限りではない。移住の失敗例のもっとも多くは、移住後の振る舞いにあるといってもいいだろう。(236ページより)
次ページ移住前、移住後に徹底すべき鉄則
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