決断時期を逃し解散の実質的決定権を喪失した麻生首相

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決断時期を逃し解散の実質的決定権を喪失した麻生首相

塩田潮

 麻生首相の解散先送り決定から1週間余が過ぎた。解散誘導の協力作戦を続けてきた民主党が対決路線に戻る。「新首相登場後の約1ヵ月」といわれるお手並み拝見期間も通り過ぎて、首相は本番の戦場に立たされる。

 この1ヵ月半、注目の解散問題で、解散示唆、撤回、再示唆、再撤回と右往左往を繰り返したが、10月30日の先送り表明の記者会見で、「解散はしかるべき時期に私自身が判断する」と大見得を切った。時期についても「第2次補正予算が通るか通らないかが関連してくる」と言った。これを見ると、首相自身、いまも解散決定権は手中にありと信じているふうに映る。
 だが、「解散断行首相」の使命と宿命を背負って登場したはずの麻生首相は、就任当初の解散決断の機会を逃したことによって、実際は解散の実質的決定権を喪失したというのが実態であろう。

  先送り後の解散時期については、今後は首相の判断ではなく、自民党各派や公明党の思惑、予算編成や国会スケジュールなどの都合、あるいは政権運営上、折り合いをつける必要から民主党との駆け引きや協議も、重要ファクターとなるに違いない。1970年代まで与野党の協議で解散時期と総選挙前の懸案処理を決める「話し合い解散」の例があったが、展開次第でその可能性も出てきた。「伝家の宝刀」の棚上げで、「名ばかりの首相」を余儀なくされ、鼻っ柱の強い麻生首相がそれに甘んじるのかという見方もある。ただ、79年の政界入り以来、「最終目標は首相」と狙い定めてきた「吉田茂元首相の孫」は、せっかく手にした政権を、安倍、福田両首相のように簡単に投げ出したりはしないだろう。

 だが、解散先送り決定で外堀が埋まり、解散権喪失で内堀も埋まった。本丸に立てこもって死中に活を求めることができるかどうか。新首相に秘策のカードの持ち合わせがあるとも思えないが……。
塩田潮(しおた・うしお)
ノンフィクション作家・評論家。
1946(昭和21)年、高知県生まれ。慶応義塾大学法学部政治学科を卒業。
処女作『霞が関が震えた日』で第5回講談社ノンフィクション賞を受賞。著書は他に『大いなる影法師-代議士秘書の野望と挫折』『「昭和の教祖」安岡正篤の真実』『日本国憲法をつくった男-宰相幣原喜重郎』『「昭和の怪物」岸信介の真実』『金融崩壊-昭和経済恐慌からのメッセージ』『郵政最終戦争』『田中角栄失脚』『出処進退の研究-政治家の本質は退き際に表れる』『安倍晋三の力量』『昭和30年代-「奇跡」と呼ばれた時代の開拓者たち』『危機の政権』など多数
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