ホンダ「新型CR-V」のデザインは何が売りか シンプルながらも割と考え抜かれた造形だ

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筆者が以前、アメリカを訪れた際、現地の自動車業界関係者に聞いて知ったことのひとつに、アメリカのユーザーは合理的なクルマ選びをするということがあった。日本ではハイブリッド車というだけで購入に至る人もいるが、現地ではハイブリッドの価値を把握し、用途に合った場合にだけ選ぶユーザーが多いという。

新型CR-Vの2列目シートは、ボディサイズの拡大もあって足元の空間を50mm拡大したうえに、背もたれを倒すと座面も沈みこむダイブダウン方式の折り畳み方法として、車中泊もできそうな長さ1830mmのフラットな空間が得られるようにしており、3列目はスプリングを内蔵することで座り心地にもこだわっている点は注目だ。

初代CR-Vは、直前まで3~4代目「シビック」のバリエーションとして設定されていたトールワゴン「シャトル」の発展型だと個人的に思っている。特に初代と2代目は、ATのセレクトレバーをコラムに配し、前席間をウォークスルーとして折り畳み式テーブルを用意するなど、使い勝手にこだわったSUVだった。

CR-Vがグローバル志向を強めたのは次の3代目からで、前述の特徴的なインテリアは失われてしまったが、新型の仕掛けを見ると、かつての個性が形を変えてよみがえったような気がした。3通りの使い方ができるセンターコンソールもそうだ。

歴代初のハイブリッド車の設定

こうしたデザイン以上に新型CR-Vでトピックとなるのが、歴代初のハイブリッド車の設定だろう。しかもホンダが持つ3タイプのハイブリッドシステムの中で、「オデッセイ」や「ステップワゴン」にも積まれ評価が高いスポーツハイブリッドi-MMD方式を採用している。

i-MMDは、2L直列4気筒エンジンと2個のモーターから成り立っており、低中速では日産「ノート」や「セレナ」のe-POWERと同じように、エンジンで発電した電気で走りつつ、高速域ではモーターよりエンジンの効率が勝ることからモーターを使わずエンジンで走る。

エンジンとモーター、それぞれの長所をシンプルな構造で両立した内容であり、モード燃費では25.8km/Lと、ボディサイズが近いハイブリッドSUVのトヨタ「ハリアー」や日産「エクストレイル」をしのぐ。しかも新型CR-Vはi-MMDでは初めて4WDも選べる。

残念なのは大柄なバッテリーを搭載する関係で、ハイブリッド車では3列シートが選べないことだろう。これはエクストレイルや、プラグインハイブリッド車の三菱自動車工業「アウトランダーPHEV」にも共通している。CX-8は全車クリーンディーゼル車なので、このようなジレンマはない。

同じi-MMD方式を採用するステップワゴンでは、前席下にバッテリーを搭載することで3列シートとの両立を果たしている。こうした工夫を知っているので、CR-Vでもホンダらしいブレークスルーを実現してほしかった。

ただし3列シートが選べるガソリン車のエンジンは1.5Lターボと、このクラスの日本車では少数派のダウンサイジングターボであり、自然吸気2Lを積むライバルより幅広い回転域で同等以上の最大トルクを発揮することから、力強さでは上回ることが期待できる。

しかも新型CR-Vが用いるプラットフォームは、走りの面で高い評価を受けている現行シビックと共通であり、乗り心地とハンドリングのバランスは高いのではないかという予想もできる。

昔のホンダ車を知る人は、そのシビックと同じように、かつてのCR-Vと比べると車格も価格もかなり上方にシフトしたことが気になるだろう。4WDで見ればガソリン車では350万円近く、ハイブリッド車では約400万円というのが最低価格なのだから。

ただ、輸入車ではこの価格帯で買えるSUVにはハイブリッド車はないし、ミニバン人気が一段落していることや、デザインや走りの面で1980年代のホンダ車のテイストを前面に押し出したシビックが注目を集めたことを考えれば、このクラスのSUVの中で多用途性にこだわった新型CR-Vに興味を寄せるユーザーは、一定数いるのではないかと考えている。

森口 将之 モビリティジャーナリスト

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もりぐち まさゆき / Masayuki Moriguchi

1962年生まれ。モビリティジャーナリスト。移動や都市という視点から自動車や公共交通を取材。日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員。著書に『富山から拡がる交通革命』(交通新聞社新書)。

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