自動車関連諸税の欠陥を放置していいのか 長く保有すれば増税になる不可思議さ

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これは自動車ユーザー、つまり消費者から見れば、国と自動車業界が結託して作った都合の良い税金徴収システムだ。

エコカー減税について

国は自動車ユーザーから、多額の税金を巻き上げたい。自動車業界は、新車をたくさん売りたい。そこで自動車の税金を高めながら、新車には減税を施すことで、国と自動車業界がウィン・ウィンの関係になった。多額の税金を負担するのは購入時ではなく、購入した後の自動車ユーザーだから、新車の販売に悪影響を与えにくい。

そして初度登録から13年を経過した車両の増税は、まさに真骨頂だ。ユーザーが涙を流しながら古い自動車に乗り続ければ、税収が自動車重量税で最大2.5倍に増えるから国が潤う。観念して新車に乗り替えれば、自動車業界が儲かる。

自動車業界は昔から「自動車の税金は諸外国に比べて高い」「道路特定財源の撤廃」などと唱えてきたが、エコカー減税やCEV(クリーンエネルギービークル)補助金の恩恵に浴していたのでは、甚だ説得力に乏しい。「減税や補助金はもういらない! 新車時の税負担が増えても構わないから、購入後の税金を大幅に削減しろ!」というスタンスが不可欠だ。国と結託しながら、口先だけでユーザーの味方を装うのはやめていただきたい。見苦しいだけだ。

ちなみに2019年10月1日に消費税が10%になると、自動車の税負担が軽減されるという話もウソと考えていい。

理由は税金の種類は減らないからだ。自動車取得税は廃止するが、その代わりに「環境性能割」が導入され、この中身はエコカー減税を実施している今の自動車取得税とほぼ同じだ。自動車重量税や自動車税も存続する。

したがって消費税率が10%に高まる分だけ、徴収される税金が増えて、減税にはならない。

自動車はすばらしいツールだが、税金はこんな状態だ。読者諸兄は、どのように考えるだろうか。

渡辺 陽一郎 カーライフ・ジャーナリスト

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わたなべ よういちろう / Yoichiro Watanabe

1961年生まれ。自動車月刊誌の編集長を約10年務めた後、フリーランスのカーライフ・ジャーナリストに転向。「読者の皆さまにケガを負わせない、損をさせないこと」が最も重要なテーマと考え、クルマを使う人たちの視点から、問題提起のある執筆を心掛けている。

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