「ノートe-POWER」がアクア対抗で執った秘策 今さら4WD追加は日産の悲願達成への布石だ

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ここ30年で見ると、トヨタの登録車年間販売台数ナンバーワンに土をつけたのは、2002年と2008年のホンダ「フィット」のみ。日産にとっての悲願とはいっても、トヨタにも王者の意地があるのだろう。

そんな局面で追加されたノートe-POWERの4WD。これは年末にかけて確実に一定程度の台数が見込めるグレードである。売れるのは北海道や東北などの積雪の多い地域が中心となる。

雪が降りしきる、積もる中、あるいは凍結した路面においては、スタッドレスタイヤやタイヤチェーンを装着するのはもちろん、4輪すべてが駆動する4WDが相対的に安心だ。

アクアには4WDが設定されていない

一方、アクアには4WD車が今のところは設定されていない。ノートe-POWERも2016年11月の投入以来、ノートの躍進を支える主力グレードながら4WDは設定されていなかった。e-POWERもハイブリッド車の一種ということを鑑みると、トヨタ、日産、ホンダのコンパクトハイブリッド車で4WDが設定されているのは、ホンダ「フィット」だけだ。

アクアもノートe-POWERもフィットハイブリッドも基本はフロントにエンジンを置き、前輪が駆動するFF(フロントエンジン・フロントドライブ)車だ。FF車は同じくフロントにエンジンを置き、後輪が駆動するFR(フロントエンジン・リアドライブ)車よりも、雪道や凍結路面での安定性はあるが、4WDにはかなわない。

ここへ来てのノートe-POWERの4WD追加は、雪国において「ノートe-POWERは欲しいけど、FFだと不安だな」と思っていた日産ファンを取り込める、あるいはアクアと迷うユーザーにも訴求できる。

国内外で大ヒットした先代(3代目)プリウスを振り返ると、唯一ともいえる弱点が4WDの設定がなかったことである。

北海道のとあるトヨタディーラーを取材で訪れたときに営業マンに話を聞いたことがある。
「『北海道とはいえ何がなんでも4WD』というユーザーばかりではありません。ある程度規模の大きい街では除雪も行き届いているので、市内など日常生活圏内移動がメインならば、軽自動車を中心に2WDも意外なほど乗っている人はいます」。

ただ、都市間移動など、冬季でも郊外を長距離走行する機会が多い人には、「2WDしかない3代目プリウスを積極的に勧めることはできませんでした。むしろ北海道地区よりも、本州の降雪地域のドライバーのほうが、4WDへの強いこだわりがある」という話も聞けた。

仮にハイブリッドなどのエコカーに興味があり、ノートe-POWERとアクアの購入を比較検討する降雪地域のドライバーにとっては、4WDの設定があるノートe-POWERが魅力に映るに違いない。

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