撤去進むが全廃はできない…「大踏切」の現状 警手が消えた十条、「列車種別」表示の京成高砂

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交通安全のほか渋滞緩和の観点からも、京成高砂駅隣の踏切に対して立体交差化の要望が出るのは自然な流れでもある。実際、地元からも立体交差化を要望する声は出ており、商店街ののぼりには「鉄道立体化早期実現」の文字が躍る。掲げられたのぼりは、ところどころ破れたり傷んだりしている。年季を感じさせるのぼりからも、踏切廃止・立体交差の要望が昨日今日に出されたわけではないことがうかがえる。だが、京成高砂駅は高砂検車区と隣接しており、この検車区があるかぎり京成高砂駅の踏切を廃止することは難しい。

列車進行方向指示器に「列車種別」の表示

なお、京成高砂駅の踏切の特徴は、列車進行方向指示器にある。列車進行方向指示器とは、接近する列車の進行方向を矢印によって表示するものだ。通常の踏切は、「→」や「←」で示される方向表示があるのみだが、ここでは「京成」「北総」の区別もしている。特段、「京成」と「北総」を区別する理由はなく、それを気にするのは鉄道マニアぐらいしかいない。ちなみに、こうした列車進行方向指示器は広島県広島市の広島駅や島根県出雲市の出雲市駅の近くにもある。

現在の道路法や鉄道事業法では鉄道と道路の平面交差は原則として認められていない。つまり、踏切設置ではなく立体交差化が求められているわけだ。都内から踏切は次々と消えているが、十条駅・京成高砂駅のような大踏切は優先的に立体交差化される。

都電荒川線や東急世田谷線にも踏切があり、これらが廃止される可能性は極めて低いので都内から踏切が全廃されることはないだろう。

それでも踏切廃止の潮流はゆるぎなく、踏切の数はどんどん減っている。大踏切を見られるタイムリミットは、刻一刻と迫っている。

事故をなくすという見地から考えれば、踏切廃止・立体交差化は歓迎すべきことではあるのだが……。

小川 裕夫 フリーランスライター

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おがわ ひろお / Hiroo Ogawa

1977年、静岡市生まれ。行政誌編集者を経てフリーランスに。都市計画や鉄道などを専門分野として取材執筆。著書に『渋沢栄一と鉄道』(天夢人)、『私鉄特急の謎』(イースト新書Q)、『封印された東京の謎』(彩図社)、『東京王』(ぶんか社)など。

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