小田急「箱根」集客と混雑緩和、両立への秘策 乗換駅を緩衝地帯に、周遊コース「逆回り」も

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老朽化した小涌谷駅は改築して耐震強化を図る(筆者撮影)

箱根ロープウェイは早雲山駅―大涌谷駅間でゴンドラを新型に置き換える。開口部が広く2人同時に乗り降りができるスイスCWA社の「タリス」というモデルで、2021年4月に運転を開始する予定だ。

箱根登山バスは総額約11.6億円かけ、2022年度にかけて新車約50台を導入する。荷物置き場を備えて外国人観光客などの利用に対応した仕様にする。

黄金色の外観が特徴の新型海賊船のイメージ(画像:小田急箱根ホールディングス)

特に目を引きそうなのが箱根観光船の「新型海賊船」の建造だ。費用は約12.5億円で、こちらのデザインは岡部氏でなく、JR九州の豪華寝台列車「ななつ星in九州」などを手掛けた水戸岡鋭治氏が担当する。

箱根観光船の岡本裕之社長によると「ななつ星のインパクトが非常に強く、ぜひ一緒に仕事をさせていただきたい」との思いで水戸岡氏に依頼することにしたという。船体は黄金色。内装は木材を多用し、細部にこだわった調度品などで高級感を演出する。

火山活動で遠のいた客足復活

小田急箱根グループによると、ゴールデンコースの乗り物が乗り放題となる「箱根フリーパス」の売り上げが好調で、2017年度に過去最高の95万枚を記録した。利用者のうち3割程度を外国人が占めるという。近い将来に100万枚の大台乗せを達成しそうな勢いだが、つい3年前の2015年度には50万枚を下回る不振に見舞われた。

箱根は日ごろ温泉など火山活動の恩恵を受ける一方で、噴火警戒レベルが上がれば、風評被害で観光客に敬遠されるリスクを抱えている。2015年5月には大涌谷周辺で火山活動が活発化しことにより、ロープウェイの運休を余儀なくされた。大涌谷周辺への立ち入りが規制され、ゴールデンコースを形成する輪の一部が欠けたことで、ロマンスカー、箱根登山鉄道から芦ノ湖の観光船まで、そろって客足が遠のいた。

火山活動の落ち着きを受けて2016年7月にようやくロープウェイが全線で再開。立ち入り規制も一部解除された。その後は全国的な訪日客の増加も手伝い、箱根町の統計によれば、2017年度に年間の観光客数が宿泊・日帰りを合わせて2152万人と、3年ぶりに2000万人を突破した。フリーパスの販売好調はこうした事業環境の改善を反映したものだ。

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