タクシー運転手の半減がありうる納得のワケ テクノロジーの超進化が変える輸送の未来
こうした動きにより、今後はどのようなことが起きるのか?
まずは、ソフトバンクとDiDiの協業の報道内容には「日本の全タクシー事業者が導入可能なオープンで中立的なプラットフォーム」とあったが、仮に受け入れ側はオープンにしても、参加するタクシー会社がテクノロジーについていけないという状況も発生するだろう。
また、プラットフォームにいずれ参加したとしても、参加するタイミングに時差が生じることで、これまで以上に利用者の流れが変わり、事業規模の格差が生まれるのではないか。配車アプリに対応できない、または対応が遅れたタクシー会社は利用者を奪われ、結果として業績が苦しくなり、大手への統廃合が加速するという状況も生まれると予測される。
先ほど見てきたように、輸送人員が半減しているのに対して、タクシーの台数が微減である状況を踏まえると、極論ではあるが、タクシーの台数が現在の半分になっても、利用者はそれほど困ることはないともいえる。しかし、これが実際に起これば、タクシーの運転手の雇用は大きく奪われてしまうことになる。タクシーの配車運用がうまくいけば、結果的に数万人から十数万人という雇用が失われる可能性もある。
また、タクシー業界首位のプレーヤーでも1ケタ台前半の市場シェアしか確保できていない状況は、今後、大きく変わってくるだろう。約1.7兆円の市場のうち数十%でも確保できれば巨大なプレーヤーとなる。第一交通やソフトバンク・DiDiなどの動きは、そうした市場獲得を狙ったように見える。
自動運転でタクシー業界はどう変わるのか
自動運転は今後、移動や輸送サービスを大きく変える可能性を秘めている。
これまでのタクシー会社の付加価値は、ドライバーの確保や車両の調達、あるいはドライバーを教育し、より多くの利用者を安全に効率的に輸送することだった。だが、「完全な自動運転」を前提とした場合に、業界にどのような状況が生まれるかを考えてみよう。
ここでいう「完全な」とは、「専属ドライバーが不要であり、単独の自動車による事故は搭乗者による内部要因では生じえない」ということである。
もっとも、外部要因による事故は考えないこととする。完全なシステムというのは存在しえない。完全なシステムを目指す姿勢は重要だが、はじめからその状況を前提にすると議論が進まなくなってしまう。論点を明らかにするために、ここでは「外部要因」を考えないという意味である。たとえば、自動運転車でないクルマが自動運転車に突っ込んでくるとか、自動運転システムを制御しているシステムの不具合により自動運転車が影響を受けるケースや、天災などの影響を考えないということである。
まず、すぐに考えられるのは、ドライバーが必要とされなくなることだ。移動したい人は自動運転車を見つけ出し、もしくは呼び出し、自ら乗り込んで目的地に行く。
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