世界約90カ国の学生が集まる「APU」、驚きの姿 「失敗する」と噂され…ドタバタ開学から18年

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今村正治(いまむら・まさはる)/立命館アジア太平洋大学副学長、学校法人立命館常務理事。1958年大阪市生まれ。立命館大学文学部を卒業後、学校法人立命館に入り、97年新大学設置準備事務室課長に就任して、立命館アジア太平洋大学の設立に深く関わる。2014年1月より現職(筆者撮影)

2018年1月にはライフネット生命創業者の出口治明さんが学長に就任して、話題を集めた。選考委員長を務めたのは今村さんだ。

「これまでAPUの学長は京都の本部で決めていましたが、次の学長は自分たちで、自薦他薦を問わない公募制で決めようと、外国籍の4人を含む10人の選考委員会を立ち上げました。

日本の大学は身内から学長を選ぶという慣例をブレイクスルーしたわけです。104人の候補者リストに出口さんが入っていて、誰に推薦されたかは非公開。本人もいまだに知りません。

選考で5人に絞り、最終的に全員一致で決まったのが出口さんでした」

ちなみに、ほかは大学教員や学長経験者などアカデミシャンばかりだったという。

出口学長が就任して8か月が過ぎた。

「出口さんはベンチャーで成功した人だけど、苦労話や自慢話なんて一切しないし、疲れたという言葉を聞いたこともない。そして、決めることが自分の仕事と自認されている。実はね、大学の会議は、とにかく長い時間をかけて議論する傾向にあります。

意見が拮抗したら持ち帰って再度議論するとか、別に委員会を作るというのが一般的だけど、出口さんは意見が拮抗した場合、それ以上に議論することを選ぶのではなく、全員の意見をもれなくよく聞いた上でビシッと決断される。大学としては画期的で、みんなポカンとしてしまうこともありました(笑)」

大学がもっと魅力的な場所になるように

APUはこれからどこへ向かっていくのだろうか。

「最近、日本の大学は(学生の質が低下したなどと)経済界から叩かれてばかり。しかも18歳の大学進学率は5割ほどしかない。この状況に大学関係者は、大学で学ぶ意義や面白さをきちんと伝えてこなかったのではないか。自分たちの責任にひきつけて考えることが必要です。

大学は地方や社会や世界を変えることができる。個人的には、大学がもっと魅力的になって、学問や職域や国籍を超えて多様な人が集まるオープンでフラットな場になればいいなと思っています」

実際にAPUは今、社会人のグローバル研修プログラムも提供しており、注目されている。

そうして今村さんは、かみしめるように言葉をつづけた。

「僕らは次の改革に挑む時期にきています。APUは国際大学を知らないアマチュアがつくった大学で、開学前、伝統ある国際大学のプロたちからは『失敗する』『プロなら絶対にやらないことに手を出したな』と言われました……。でも開学から18年経って、僕らもいっぱしのプロになっちゃったわけ。もう一度、常識を打ち破るために、スケールの大きな起業を経験した出口さんの存在は大きいですね。

今の僕たちには、開学時にはなかった大切なネットワークがある。誇るべき卒業生やサポーターがいてくれるから心強い。そんな人たちや出口さんと一緒に、皆がワクワク・ハラハラするようなAPUをつくっていきます」

佐々木 恵美 フリーライター・エディター

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ささき えみ / Emi Sasaki

福岡市出身。九州大学教育学部を卒業後、ロンドン・東京・福岡にて、女性誌や新聞、Web、国連や行政機関の報告書などの制作に携わる。特にインタビューが好きで、著名人や経営者をはじめ、様々な人たちを取材。

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