「女性医師」に必要なのは、労働環境の改善だ 医師たちが理想とする「医療現場」とは何か

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筆者自身は多分、ラッキーな医師だと思う。

上司にも職場環境にも恵まれ、女性であることを不利に感じる機会はあまりなかった。幸い、子ども2人も健康で元気でいてくれ、それほど手がかからない。子育てをサポートしてくれる実の母親は「しっかり働きなさいよ」と言って背中を押してくれる。

だから、「子育てしながら仕事を継続してきて偉い!」というような評価を受けると、戸惑いを覚えたり、なんとなく申し訳ない気持ちになったりする。

常に医師であることを求められる

現在、医療現場においても、各専門医が所属する学会においても、女性医師のキャリアを支援する活動が活発になってきている。昨今、外科系に進む医師自体が少なくなっていることもあり、外科系の診療科では子育て中の女性医師を積極的に支援する動きもある。

しかし、なぜ「女性医師の」とわざわざ枕詞を置く必要があるのだろうか。男性医師のキャリア支援は別のことなのだろうか、と思う。

男性医師だって子育てに参加したい人もいるだろうし、育休だって取りたいかもしれない。「子育て中だから」というある種の言い訳も使って、休んだり早退したりすることもできない。「ストイックに医師というキャリアを邁進していかなければいけない男性医師も大変だよなぁ」と思う。

つまり、医師を取り巻く職場環境の問題点は、男性、女性というジェンダーをめぐる問題以外にさまざまあるということだ。

たとえば、いまだに医師は長く病院で働いていることで評価されるような風土が根強く残る。

業務が順調に終わって夕方の勤務終了時間にやることがなくなっても、「お先に失礼します」と帰宅することはなんとなくはばかられる。あるいは、帰ろうと思った矢先、担当患者が急変すれば、患者の命を預かる医師として帰ることは許されない雰囲気もある。

海外では引き継ぎさえすれば、医師は時間通りに帰れる。一方で、日本の医療現場ではそれが許されない風潮がある。

そして、患者自身の立場に立って考えても、自分が具合の悪いときに、休日であろうと深夜であろうと駆けつけてくれる医師を「すばらしい先生」と思うようなところもあるだろう。

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