鴻海は本当に儲かっているのか 注目の海外企業【第4回】

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すでに述べた通り、鴻海の特色は大量生産に速やかに応じられることにある。結果的に高いシェアを有するメーカーを顧客にする以上、鴻海の売り上げが特定の顧客に集中するのも当然と言えば当然だ。こうした大手顧客からの受託数量が今後大きく減る可能性もないわけではないが、変動の大きい消費者向けの最先端製品を扱う以上、とらざるを得ないリスクであり、そのリスクに見合った利益があればよいことになる。

従業員数は129万人、労働集約的ビジネス

鴻海は売り上げで世界30位であるが、従業員数ではウォルマートの220万人、中国石油集団の166万人に次ぐ129万人で第3位にランクインしている。従業員数は2007年の55万人から増えてきたのだが、最近2年間は人数急増の割に売り上げの伸びは緩やかだ。その結果、2012年には従業員1人当たり売り上げ(期首期末平均従業員ベース)は前年から10%減少し、1人当たり当期純利益も7%減少した。従業員の生産効率はいくらか下がっているように見える。

一方、1人当たり人件費(保険、退職金なども含む)は2011年までは小幅に増減していたが、2012年は前年から19%も増加した。人数増加ともあいまって、人件費総額は膨らんでいる。ただ、2012年の1人当たり人件費は年間23.9万台湾ドル(約71万円)であり、増加したとはいえ、中国の低い賃金水準のメリットをいまだに生かしているのは確かだろう。

売り上げに対する人件費の比率は2011年までは、ほぼ5%前後だったが、2012年は7%まで上昇している。利益率の水準そのものが低い(売上高当期純利益率は2010年以降2%台)ことを考えると、売上高人件費比率が2%幅上昇したことは大きな影響をもつはずだ。2012年には他のコストの負担が軽減されたため、利益率は下がってはいないが、これからも人件費上昇はありそうで、利益率の維持は先行きは難しくなってくるのではないか。どこまで請け負い価格に転嫁できるかにかかっている。

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