信長、秀吉を診察し、家康に医術を授けた名医 伝説の医師・曲直瀬道三とは何者だったのか
信長、秀吉、光秀の命を預かり、家康に医術を授けた戦国の名医がいた。これまで誰も書けなかったその生涯を『小説 曲直瀬道三――乱世を医やす人』で描いた作家・山崎光夫氏と、日本の漢方医療の第一人者で戦国期の医学事情に詳しい秋葉哲生氏に、戦国の「医療革命」とまで言われた道三の医学の真髄や、彼が日本の医学界に遺した多大な貢献について語ってもらった。
伝説の医師・曲直瀬道三
――曲直瀬道三(まなせ・どうさん)とはどのような人物だったのでしょうか。
山崎:伝わるところによると、曲直瀬道三は、幼くして父親も母親も亡くし伯母と姉に育てられたようです。子どものころから聡明だったようで、相国寺の塔頭である蔵集軒に入って修業する日々を送っていました。その中でも利発さが際立っていたのでしょう、西一鷗という友人と一緒に関東の足利学校に留学し、医学の道を志すようになります。
そこで田代三喜(たしろ・さんき)という、当時、明から最先端の医学の知識をもって帰ってきた人物と出会い医師になるわけですが、彼は医者の家に生まれたわけでもないですし、医家の名門との関わりもないですから、次々とそれまでの医学の常識を打ち破って、戦国の世に「医学革命」を起こしたんですね。
信長や秀吉、光秀といった戦国時代の武将や天皇、足利将軍を診察したことで名を馳せていますが、一方では身分の低い庶民も分け隔てなく診察しています。これは当時としては常識外れなことでした。
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