北海道の寒村が挑む「自治体株主制度」が凄い 返礼品で終わらない、長い関係性の作り方

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とはいえ、ひとくちに応援人口を増やすといっても簡単ではない。単に応援してくれるだけでなく、義務と負担を負ってこそ住民と言える、と町長は考えた。町外に住む人たちを対象にした税金を創設できないか、あれやこれやと議論は続くも、縁もゆかりもない自治体に納税するという前代未聞な制度はなかなか実現しなかった。国にも相談したが、「何を考えているんですか。自治体なんて全国に無数にあるのに、そんな相談はいちいち相手にしてられませんよ」とあしらわれてしまう始末。

何かいいアイデアはないものか、そう考えあぐねていた矢先に飛び込んできたのが、2008年に制度化されたふるさと納税だった。これを活用しない手はない、と松岡町長は即断した。

株主優待の制度を取り入れる

ただ「納税というと一方的に取られるだけの響きがある。自ら目的を持って、自主的に参加する形にしたい」。すると、当時都内の民間企業での研修に参加していた若手職員がおもむろにこう提案した。「株式会社には、株主優待という制度があります。参考にしてみては?」。このやりとりが、ひがしかわ株主制度誕生のきっかけになった。

松岡市郎町長は人口減に直面する中で、「応援人口」作りに舵を切った(記者撮影)

納税者との長期的な関係を築くために参考にしたのは、企業と株主の関係だ。短期的に売買する株主もいる一方、企業の経営方針に共感し、応援する意味で長期的に株式を保有する株主も多い。こうした長期保有者こそ、町長が目指した応援人口の姿だった。

仕組み自体はふるさと納税制度を下敷きにしているものの、細部は株式投資をヒントにした。町に投資(寄付)する際は、スローガンである「写真の町」の情報発信やスキー選手の育成、町産ワインの醸造など、どの事業に投資するかを株主自身が決める。各事業には目標金額と募集期間が掲げられ、毎年各事業の進捗や運用経費が報告される。自分の投資がどのように使われ、どう役立っているかが分かるのだ。

ほかの市町村と同じように返礼品もあり、特産品の農産物や木工品などが贈られる。ユニークなのは、株主証と特別町民証だ。株主証があれば町内の公共施設を町民価格で利用できたり、町内の買い物でポイントが貯まったり、株主専用の宿泊施設もできたりする。文字どおり、「株主優待」が受けられるわけだ。

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