JALとANA、「台湾表記」問題で見せた強い意地 中国・台湾双方に配慮、試行錯誤を繰り返した
日系2社による表記変更が始まったのは6月上旬。台湾の大手紙「自由時報」は6月8日、JALとANAのサイト上における「台湾」の表記が「中国(台湾)」に変更されていると報じ、現地では一時的に中国の圧力に屈したのではとの見方が出た。2社は「意図したものではない」として、原因は契約していた海外の地図サイトが表記を変えたためだと説明。同日中にそのサイトの利用を中止すると、変更前の「台湾」表記が復活した。
とはいえ、変更前のままでは中国の通達に反したままだ。その後2社は、6月18日までに中国と香港向けのサイトのみ、表記を「中国台湾」に変更し、台湾や日本を含む他地域向けのサイトでは「台湾」表記を維持する“使い分け”を行った。
JALとANAの広報担当者は「中国と台湾やその他の地域のそれぞれの利用者にとって分かりやすい表記にした」と、使い分けに至った理由を説明。これについて複数の台湾研究者は、「日本の外交方針を十分に理解した最善の方法だった」とし、ほかの航空会社からは「今後の対応の参考になるかもしれない」と評価する声も出ていた。
「台湾にとって日本への感情は特別」
しかし、台湾の外交部(外務省)は2社を名指しして「厳正に抗議する」と発表。これ以前に海外航空会社が表記変更を行った際は、中国の行いを非難する形で台湾側は遺憾の意を表明していたが、日系2社には明確に怒りを示した。外交部の李憲章報道官は6月19日の記者会見で抗議の理由について、親日家の多さを念頭に「台湾の人たちにとって(日本への)感情は特別だ」と説明した。
中国と台湾双方から板挟みにあった両社は7月24日、最終的に前述の通り、中国、台湾、韓国を「東アジア」という地域でひとくくりにして、都市名のみを表記する方法に変更した。「(各当局を含めて)皆が受け入れやすい表記方法」(ANA広報)であり、7月26日時点で中国民航局も両社の表記方法に対して指摘を行っている様子はなく、「事態は収束していく」(同)とみられる。
JALとANAがこれだけ対応を熟慮したのは、「歴史的、地理的な近さの意味で、台湾と中国に対応する機会が多かった」(ANA関係者)からでもある。
1972年に日本と中国が国交を正常化した際に、日本と台湾は断交。国交がなく、国家として承認されていない台湾にナショナルフラッグキャリア(国を代表する航空会社)であるJALの機体を飛ばすことは、中国への配慮から難しかった。
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