トヨタがこだわり続ける「燃料電池車」の未来 「100年後に人類が生き残るための技術」
新事業計画部エネルギー事業室FC外販グループ長の大田育生氏は「(既存の)乗用車やFCVの部品をできるだけ多く、FCトラックでも使うつもり」だという。米カリフォルニア州で実験中のFCトラック、来年供給予定のセブンーイレブン向けFC小型トラック、FCバスなどでミライのFCシステムを共有し、コストを削減する考えだ。
米テスラ<TSLA.O>や日産自動車<7201.T>など多くの車メーカーがガソリン車に代わる環境車としてEVに注力し、日産は独ダイムラー<DAIGn.DE>、米フォード・モーター<F.N>との共同開発によるFCV商用化を凍結している。FCVを生産するのはトヨタ、ホンダ<7267.T>、現代自動車<005380.KS>など一部にとどまる。
米調査会社LMCオートモティブの予測によると、27年の世界乗用車販売に占めるシェアはEVが約11.7%であるのに対し、FCVは0.2%に過ぎない。しかしトヨタは5月、20年以降にFCVの世界販売を現在の年3000台から3万台以上とする計画に備え、FCVの基幹部品であるFCスタックと高圧水素タンクの生産能力を増強すると発表。豊田合成も高圧水素タンクの製造に参入、約120億円投じて工場新設に踏み切った。
「100年後、人類は生き残れない」
トヨタがFCVにこだわるのは、EVは航続距離が短く充電は急速でも30分かかり「全ての顧客ニーズを満たすのは不可能」(先進技術統括部主査の河合大洋氏)とみるからだ。FCVならEVより1回の水素充填(じゅうてん)で長く走行でき、充填時間も3分と短い。
航続距離はEVでもコストをかければ技術的には伸ばせるが、約500キロ(日本基準)を走れるテスラのEV「モデルS」の価格は最低でも約800万円台。トヨタはミライの価格を大幅に引き下げ、現在の航続距離約650キロを3代目では「25年までに1000キロ」(別のトヨタ幹部)に伸ばす計画だ。
水素は同重量では電池よりも多くエネルギーを蓄えることができる。現在は石炭火力などに依存する電気と比べ水素は地球上に無限にあり、エネルギー資源の少ない日本ではエネルギーの多様化という点でも期待される。トヨタでFCVの開発が始まったのは1992年。「FCV技術を完成させないと、人類として50年、100年、生き残れないとの思いで開発してきた」と田中氏は語る。