インスタに映えまくるカラフルチョコの正体 着色料使わずにピンクや赤、黄色を実現

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ヴァローナ社は高級パテイスリー、高級チョコレート店への影響力が強く、世界中の一流ショコラティエ、パティシエから絶大な信頼を得る。パリの有名ショコラティエ、ジャン=ポール・エヴァン氏は「人工的なものを使わずに色と香りを出している。この特徴でクリエーションの幅が広がる」と話した。

赤はバレンタインやクリスマスにふさわしい。また甘酸っぱいイチゴ味は「ナチュラルな風味でミルクにもマッチし、日本人好みです」(ヴァローナジャポン、田中美礼さん)

同時に開発された黄色のチョコレート「インスピレーション・パッション」は、同技術でパッションフルーツから色と香りを抽出した。

中国のムーンケーキをイメージしたケーキ(ヴァローナ社「インスピレーション・パッション」を使用)

来日した仏ヴァローナ社のクリエーティブディレクター、フレデリック・ボウ氏は、2018年7月、東京で3日間にわたって日本のショコラティエ、パティシエ約500人を対象にデモンストレーションを行った。

最新レシピを披露し「私たちの新開発からインスピレーションを得て、味とビジュアルを両立し、日本の職人により豊かな表現をしてほしい」と話した。

チョコレートの世界では奇想天外な開発

ところで、本記事内ではわかりやすく「チョコレート」という言葉を使っているが、実際のところこれらは従来のチョコレートとは内容がかなり異なる。チョコレートの既存の枠組みや概念を覆す、全く新しい製品なのだ。

赤や黄色のエクレアやアイスクリームバー。味も天然のフルーツ由来で、赤はイチゴ、黄色はパッションフルーツの味

例えば「インスピレーション・フレーズ」(赤色)は、日本の規格表示では「チョコレート」で、原材料が「カカオ豆」であることはチョコレートと変わらない。しかしカカオ豆の中に約50%存在するカカオバターだけを抽出し、ミルクを加えず(ここでミルクを入れるとホワイトチョコレートの類になる)、フルーツのフリーズドライを入れて色と味を両立させた。この発想と技術開発は革新的で「チョコレートの世界では奇想天外なもの」(仏ヴァローナ社、フレデリック・ボウ氏)だ。

開発の背景にあるのは「フォトジェニック」な風潮だけではない。ナチュラル志向の高まりにより、消費者が着色料・香料に高い意識を持ち始めていることと、チョコレートをはじめ、食品に使用可能な色素の規制が国内外で進んでいる業界の現状がある。

これからチョコレートの世界が一層華やかになりそうだ。チョコレートの歴史上、最もカラフルな時代の訪れは、世界のチョコレートメーカーの、過去にとらわれない発想と挑戦の成果なのである。

市川 歩美 チョコレートジャーナリスト/ジャーナリスト

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いちかわ あゆみ / Ayumi Ichikawa

大学卒業後、民間放送局に入社、その後NHKで、長年ディレクターとして番組企画・制作に携わる。現在はチョコレートを主なテーマとするジャーナリストとして、日本国内、カカオ生産地などの各地を取材し、情報サイト、TV、ラジオなど多くのメディアで情報発信をしている。チョコレートの魅力を広く伝えるコーディネーターとしても活動。商品の監修や開発にもかかわる。

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