意外と知らない「カバディ女子」のスゴい奮闘 アジア大会で活躍を目指す日本代表選手は?

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今回のアジア大会で女子代表に選出された緑川千春さん(21)がカバディを始めたのは高校3年生の秋のこと。バドミントン部を引退した直後、カバディの大会に借り出されて参加した。

8月のジャカルタ・アジア大会の日本代表に選ばれた緑川千春さん(筆者撮影)

バドミントンに打ち込んでいたときには、カバディに関して「同じ体育館の片隅で練習している」程度の認識にすぎなかったが、試合に出てみると「仲間との一体感が心地よかった」。それ以降、カバディへのめり込んでいく。

大会での活躍が認められて、年明けには日本代表強化指定選手に選出。カバディへ転向後、半年足らずで代表の座を射止めた。2015年10月には韓国遠征へ参加。その後も代表選手としてイラン、台湾など海外での試合経験を積み重ねている。

今後の練習環境の整備が課題となる

ただ、日本代表とはいっても、海外遠征では選手が自腹を切って旅費の一部を賄うケースがほとんどだという。緑川さんは週4回の合同練習やトレーニングの傍ら、東京・王子の保育園にパートの保育士として週5回勤務。給料を遠征費などに充てている。もともと保育士になるのが夢だったとはいえ、「(代表チームに大きな)スポンサーが欲しい」と緑川さんはこぼす。

選手としての練習をする傍らで保育士として勤務している(筆者撮影)

世界で現在、インドに次ぐ強豪と言われるのが韓国代表だ。「彼女たちはいつもチームで一緒に行動しており、とても仲がいい」(緑川さん)。

スピードスケートの日本女子パシュート団体のメンバーが今年2月の平昌五輪でチームワークを武器に金メダルを勝ち取ったのは記憶に新しい。

彼女たちの一体感を醸成したのは長期にわたる共同生活。1年のうち、300日以上も寝食を共にしていた。緑川さんは練習環境の面で、韓国チームとの彼我(ひが)の差を痛感している。

だが、今回のアジア大会の結果いかんで周囲のカバディに対する見方も変わるかもしれない。男子チームは2010年に中国・広州で開かれた大会で銅メダルを獲得したが、女子は初参加となった2014年の韓国・仁川大会で1次リーグ敗退に終わった。

「カバディを保育園の子どもたちの遊びに取り入れたい」と話す緑川さん。念願のメダルを手にすれば、競技者人口の裾野を広げようという緑川さんの思いも一歩、実現へ近づくはずだ。

松崎 泰弘 大正大学 教授

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まつざき やすひろ / Yasuhiro Matsuzaki

フリージャーナリスト。1962年、東京生まれ。日本短波放送(現ラジオNIKKEI)、北海道放送(HBC)を経て2000年、東洋経済新報社へ入社。東洋経済では編集局で金融マーケット、欧州経済(特にフランス)などの取材経験が長く、2013年10月からデジタルメディア局に異動し「会社四季報オンライン」担当。著書に『お金持ち入門』(共著、実業之日本社)。趣味はスポーツ。ラグビーには中学時代から20年にわたって没頭し、大学では体育会ラグビー部に在籍していた。2018年3月に退職し、同年4月より大正大学表現学部教授。

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