楽天モバイル、「3年契約」に潜む落とし穴 総務省方針に背く「囲い込み」の問題点とは?

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楽天の店舗に客として訪れたときに店員から示された注意点は、途中解約には違約金があることくらいだった。説明方針について楽天モバイル事業マーケティング・ユーザーエクスペリエンス課の鈴木暁・シニアマネージャーは「『還元額がいちばん大きいのは3年契約』という営業トークはしつつも、最低利用期間や違約金についてはしっかり伝える方針でやっている」と話す。

求められる消費者の冷静な判断

長期契約とセットの違約金は、割引の対価として一見、正当性があるようにも思える。こうした手法は通信業界に限らず、他業界でもよくある。ただ、総務省の担当者は「iPhoneの登場前と登場後とで世界が変わったように、通信業界は変動スピードが速く、先が読めない」と通信業界固有の状況について指摘する。

6月に行われた夏商戦発表会の様子(記者撮影)

そのうえで、「今後、もし他社がよりよいサービスや商品を出してきても、契約期間中ならば利用者は違約金で動きにくい。利用者第一で考えれば、3年という期間拘束をする以上、こうした点も説明してほしい」(同)と言うが、楽天の店頭で具体的なデメリットの話はいっさいなかった。

それだけではない。MNOとしての携帯電話事業は、周波数帯が必要なこともあり、参入障壁が極めて高い。MNOに回線を借りる形でMVNO各社も事業を営んでいるが、構造的には寡占が起きやすい業界といえる。そうした業界で各社が、利用者を長期契約に誘導して違約金で縛り付ければ、寡占化が一層進む可能性がある。その結果として、通信料金の高止まりにもつながりかねない。

総務省が今年4月、携帯電話事業に使う周波数帯の取得を楽天に許認可した背景には、キャリア3社が9割のシェアを持つ状況を打破して、競争を活性化してほしいという期待があった。ただ楽天の3年契約からは、MNOサービスを始めたときにMVNOから利用者を移行させることで顧客を確保する、という狙いが透けて見える。楽天の「囲い込み」姿勢は、総務省の方針に沿ったものには見えない。

2020年には次世代通信規格である5Gの商用化が予定され、通信業界は今も激流の真っただ中にある。3年契約やiPhoneの4年縛りは一見「お得」に思えるが、本当にその契約を選んで大丈夫なのか。利用者には、セールストークに惑わされない冷静な判断が求められている。

奥田 貫 東洋経済 記者

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おくだ とおる / Toru Okuda

神奈川県横浜市出身。横浜緑ヶ丘高校、早稲田大学法学部卒業後、朝日新聞社に入り経済部で民間企業や省庁などの取材を担当。2018年1月に東洋経済新報社に入社。

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