就任1ヵ月余で早くも賞味期限切れ間近となった麻生首相

就任1ヵ月余で早くも賞味期限切れ間近となった麻生首相

塩田潮

 議員任期残り1年という時期に政権を担った麻生首相は、最初から「総選挙実行首相」の使命と宿命を背負っての登場だった。
 就任以来、本人は表向き、「解散のかの字を私から聞いた人はいない」「解散という政局よりも景気対策優先」「私自身、解散について言ったことは一回もない」と言い続けてきた。にもかかわらず、一方で、総選挙の投票日について、10月26日説や11月30日説が大きく伝わった。結局、昨30日、首相本人が追加経済対策とともに解散先送りを表明したため、11月30日説も幻に終わった。

 早期解散希望の民主党、11月総選挙に固執する公明党、解散風をあおり続けた自民党の細田幹事長らが、それぞれの思惑と計算で突っ走っただけで、首相のほうはその間、沈思黙考、千思万慮の末、決断を避け続けたというふうにも映る。だが、実際は違った。
 「10月26日説」は臨時国会冒頭解散を示唆した「文藝春秋」11月号(10月10日発売)の麻生論文が根拠になっていたし、「11月30日説」も、報道によれば、今月前半に首相本人が公明党にその旨を伝えてあったという。だとすれば、「解散は私が決める」と大見得を切りながら、実際は右往左往、付和雷同、優柔不断の繰り返しだったのではないのか。

 闘い方を知らずに自滅した安倍元首相や、闘わずに乗り切ろうとして失敗した福田前首相と違って、「突破力」が麻生首相の売りだと周辺の人たちは言う。だが、もしかすると、実際は選挙劣勢の情報に腰が引け、金融危機や経済悪化を奇貨として勝負回避という気になったのかもしれない。
 麻生首相は昨日、追加経済対策と3年後の消費税増税を示唆しただけで、解散問題を含めた中・長期の政権戦略は明示しなかった。「総選挙不実行首相」の悪評を背負い、就任1ヵ月余で早くも賞味期限切れ間近である。
塩田潮(しおた・うしお)
ノンフィクション作家・評論家。
1946(昭和21)年、高知県生まれ。慶応義塾大学法学部政治学科を卒業。
処女作『霞が関が震えた日』で第5回講談社ノンフィクション賞を受賞。著書は他に『大いなる影法師-代議士秘書の野望と挫折』『「昭和の教祖」安岡正篤の真実』『日本国憲法をつくった男-宰相幣原喜重郎』『「昭和の怪物」岸信介の真実』『金融崩壊-昭和経済恐慌からのメッセージ』『郵政最終戦争』『田中角栄失脚』『出処進退の研究-政治家の本質は退き際に表れる』『安倍晋三の力量』『昭和30年代-「奇跡」と呼ばれた時代の開拓者たち』『危機の政権』など多数
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