民泊で儲けたい人を妨げる「厳格規制」の波紋 法整備で物件8割減、認可手続きも超煩雑
ところが、水清ければ魚棲まず。これまで民泊として運営されていた多数の物件が撤退に追い込まれることになった。7月23日発売の『週刊東洋経済』は、「熱狂の開業ラッシュ ホテル爆増」を特集。訪日観光客が増加する中、異業種からの参入や民泊の法整備などによって沸騰するホテル業界の現在を紹介している。
民泊大量撤退の震源となったのが、民泊仲介最大手の米エアビーアンドビー(Airbnb)だ。同社は、4~6月までの3カ月で、民泊新法下での届け出番号がない約5万件の物件をサイトから削除した(調査会社エアラボ調べ)。3月半ば時点で約6万2000件の物件が登録されていたが、現在はその2割程度に留まる模様だ。
違法物件の大量削除は宿泊客も巻き込む大混乱に
違法物件の大量削除は、宿泊客も巻き込んだ大混乱に発展した。法律施行の直前にあたる6月7日、観光庁からの通告に基づき15日以降に入っていた違法物件への予約を急きょ強制キャンセルに。エアビーは、宿泊客の旅行プラン変更などにより生じる費用を負担するため、1000万ドル(約11億円)の基金も設立した。
違法物件は6月15日以降の予約が取れないようあらかじめ設定すれば避けられたトラブルだが、「エアビーからは、すでに入った予約が削除されることはないと、説明を受けていた」(ある違法民泊の家主)。
エアビーの指導にあたった観光庁は混乱の事情を明かす。「エアビー側は、突然観光庁が予約のキャンセルを要請したかのように言っているが、実際は、年明けから違法民泊を排除するようたびたび通告してきた。違法民泊への対応にもっと猶予期間が欲しいとは要望されたが、法律の施行日が決まっている以上、無理な話だ」(観光庁・民泊業務適正化指導室長の波々伯部信彦氏)。
それでも、エアビーのサイトから違法物件が一掃されたわけではない。民泊として届けられた番号と実際の物件が照合されるわけではないため、虚偽の届け出番号を記載して登録する物件が出現。「観光庁や自治体と協力をして虚偽番号の洗い出しを続けている」(エアビーアンドビージャパン)ものの、いたちごっこが続く。
民泊新法下での申請が開始されたのは3月だが、6月29日時点で受理された件数はわずか3451件。沖縄県那覇市で1、石川県金沢市で0など、訪日観光客に人気の地域にも関わらず登録が進まない自治体も複数ある。民泊の合法運営が思うように拡大しないのはなぜか。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら