民泊で儲けたい人を妨げる「厳格規制」の波紋 法整備で物件8割減、認可手続きも超煩雑
最大の足かせになっているのが、民泊新法の厳格な規制だ。営業上限日数は年間180日に限られるため、年の半分は収入が入ってこない。近隣住民に民泊の存在を知らせるため、ビラをまく、集会を開くなどの義務もある。さらに、条例で各自治体が独自のルールを上乗せできるのも参入のハードルを高めている。
観光地の京都市では、地元の旅館やホテルに配慮してか、住居専用地域では1~3月の閑散期しか運営が許されない。兵庫県神戸市でも、有馬温泉の付近では夏の約2カ月しか運営できない。大阪府箕面市では、ごみを出すのに1枚30リットルで2470円の専用袋の使用を義務付けた。波々伯部氏は、「民泊での迷惑行為や犯罪が度々報道されたことで、民泊=迷惑施設という印象が蔓延してしまった。訪日客需要の高い自治体ほど、過剰な規制で民泊に参入しにくくなっている」と困惑する。
認可手続きもとにかく煩雑
認可を受けるための手続きもとにかく煩雑だ。東京都で民泊物件を運営するある40代の男性は認可を受けるまでの苦労をこう振り返る。「添付しなければならない書類の数がとにかく膨大。窓口に行くと新たな書類の提出を求められることもあり、担当者によって言うことが違う。本業を抱えながら手続きを完遂するのは難しく、結局行政書士に依頼した」。こうした状況を受けて、ついに観光庁も7月9日の会議で各自治体に手続きの簡素化を要請したという。
一方、法整備の後押しで商機を見出したのが住宅業界だ。パナソニック傘下のパナソニックホームズ(旧パナホーム)は今年度、多層階住宅の施工プランの1つとして、民泊に参入した。
ほかにも、住友林業が2017年12月に民泊参入を発表。大和ハウスや積水ハウスも、訪日客を意識したサービス付き賃貸マンションなどに注力する。こうした企業の参入が増えれば、「ずさんな民泊」のイメージ改善にもつながる。民泊の許認可に詳しい日本橋くるみ行政書士事務所の石井くるみ氏は「今後は事業として本気で運営したい貸主が増えていくだろう」と予想する。
観光立国を国策として掲げる以上、宿泊施設の拡充は待ったなしだ。民泊の法整備が旅館やホテルなど既存業界の保護に留まるようでは、本末転倒も甚だしい。健全な民泊の拡大に必要な規制とはいったい何か。今一度、再考の必要があるはずだ。
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