首都圏83区間「鉄道混雑率」最新ランキング ワースト上位「常連」の小田急は20位圏外に
これに比例するように横須賀線の利用者数も増えており、2009年度には3万300人だった最混雑区間のピーク時1時間の輸送人員(当時の最混雑区間は新川崎―品川間)は、翌2010年度には3万6050人に増加。混雑率も182%から190%へと上昇し、これ以降若干の輸送人員の増減はあるものの、190%を上回る状態が続いている。
武蔵小杉駅の横須賀線ホームの混雑は激しく、朝の通勤時間帯は同線側の改札口(新南改札)に行列ができ、ホーム上もギリギリまで人で埋め尽くされる。これまでも混雑対策として臨時改札の設置などが行われてきたが、JR東日本と川崎市は7月17日、抜本的な混雑緩和に向けて横須賀線ホームの増設と新たな改札口の設置を発表した。使用開始は2023年度の予定。駅の混雑については改善が期待できそうだが、列車の混雑緩和は引き続き課題として残る。
ハード面での改良には限界
東京メトロ副都心線やJR「上野東京ライン」の開業、そして小田急の複々線化など、ここ10年ほど混雑緩和につながる鉄道プロジェクトが続いていた東京の鉄道網。10年前は171%だった東京圏主要区間の平均混雑率は163%まで下がった。国の交通政策審議会による東京圏の都市鉄道に関する答申(2016年)では、東京圏主要区間の平均混雑率を150%以下に、ピーク時の各路線の混雑率を180%以下にすることを目標としている。
今後、混雑緩和に結び付きそうなのは豊洲―住吉間の地下鉄有楽町線(東京8号線)延伸構想。実現を長年要望してきた江東区の資料によると、同線が開業すれば東京メトロ東西線の混雑率は199%から176%に、総武線各駅停車も192%まで緩和される見込みだ。東京都は事業スキームの構築について年度内をめどに協議を進める方針を示している。
だが、ほかに大幅な混雑緩和が期待できそうな計画はあまり見当たらない。首都圏でも近い将来の人口減少が見込まれるものの、交通政策審議会の答申によると、おおむね既存の鉄道ネットワークと運行サービスを前提とした2030年の需要推計では「ピーク時における主要31区間の平均混雑率を150%とする目標の達成も困難」と推計されるという。
国交省は今回から、東京圏の主要区間についてはラッシュのピーク1時間だけでなく、「ピークサイド」と呼ばれる前後の1時間についても混雑率の公表を始めた。狙いは混雑の「見える化」によるオフピーク通勤の推進だ。交通機関だけでの通勤混雑対策には限界がある中、掛け声倒れに終わらない通勤の分散化、そして輸送を考慮したバランスある都市開発は今後も大きな課題だ。
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